薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□七
17ページ/21ページ






「安心しろ…浪神鬼を殺しはせん…お前が唯一にして
全ての鬼と交わる事が出来る我らが鬼の眷族…そう簡単に失えるか」

「……何を言っているか、理解出来ませんね」
「ならば、この際だ…聞いておこう
…お前は己を浪神鬼だと理解しているのか…?」

「!……理解しているのなら…貴方とは…もっと
話がしっかりと繋がっていたと思われますが…ねっ!!」

――ズジュッ!!ダッ……ザザッ

「!?」


 左腕を犠牲にして何とか背後から脱し、急いで副長に駆け寄った
残念ながら長刀は右手にあり相手に刃を向けられていたのは
左首筋…よって左手に持つメスでは刀を弾くのに短い為

 覚悟して腕を使った所、敵も予想してなかったのか
しくじったとばかりの表情をしていた。


「縁っ!!…お前…無茶ばっかしやがって…っ」

「大丈夫ですよ…腕なら何回も切ってますし
勢い余って深いですが、直ぐに塞がりますよ」

「馬鹿野郎!そう言う問題じゃねえだろうが!!」
「…す…すみません…」


 しかし、敵の目の前だというのに副長の目の前に戻ったら
戻ったで、もの凄い形相で怒られた…『腕の一本や二本…』
と言ったら今度は副長が鬼に変わってしまった。


 暫く、忘れられそうにない。


「…その人間の言う通りだ、お前は何を考えている…
普通、背後を取られれば大人しくするのが
筋であろう…自ら傷を付けような行動を取るとは
…呆れる…己の身がどれほど大切かもう少し知れ」

「……、…申し訳ない」


 なんだよアンタ、敵だろうに…
明から様に溜め息は付かないでほしいな
先に刃を向けたのはそっちの癖にどっちの味方だ

 コンチクショー、少し前までのシリアスを返せこのヤローめ
この状況下、口では言い騒げないから内心で悪態を付いた。

「……………」

 あれ…副長も頷いてた、そんな敵に同感しなくても。




――ダッダッダッダッ!!
「風間殿!こんな所に!?その羽織り、貴方達は新選組か」

「!…あんたら…薩摩の人間か?」
「は…?」


 何故、薩摩藩士が此処に居る、薩摩は会津藩とは
協力関係の筈なのに、今目の前の敵の事を
『風間殿』と言って探していたような口振りだ…。


「お前達…か、用は何だ…俺は今忙しい」

「用の問題ではありません!この方達は協力関係にある
会津お預かりの新選組の方々ではありませんか!
何故に刃を交えているのです、今すぐにお納め下さい!」

「…薩摩の人間だと…?」


 風間と言った男と薩摩藩士の様子を見る限り、どうやら
本当に薩摩側の者だと、理解出来るが…何故邪魔をしたんだ。


「この俺に意見する気か」

「…っ…上がお呼びなのです…それに協力関係にある
会津と薩摩に亀裂が入ればそれこそ一大事、此処はお戻り下さい」
「……チッ…」


 薩摩藩士の辛抱強い説得には溜め息混じりの
舌打ちをしながらも、風間は刀を納めた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ