〜尊いし眸〜

□六章
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「政宗殿…某とて貴殿がどれ程、聖殿を思っておるか
……某も彼を通して何か分かる気がするのでござる…
政宗殿の怒りは御最も……だが、政宗ど…」
――ダッ…ジャキンッッ…
「!、チッ…随分荒んでんじゃん…っ!!」
「!?」
――ガキィィンッッ!!

「くっ…!?」
――ギギギギッ!!



 遠くでも……一瞬の出来事だった
一刀流ではなく直に片手に三爪、幸村さんに刃を
……政宗様は躊躇なく竜の爪を断てようとした

 それを間一髪で佐助さんが合間に入り何とか
甲賀手裏剣で苦しそうに受け止めてはいた…が
それは、とても重く、表情は辛く、苦だった。


 あれは迷いない本気、気を抜いていたならば裂かれていた
怪我では済まされない…いや、それすら越えてた。


「…おい…真田幸村…テメェは…今、何を見てんだ?」

「何を…とは…」

「……、民草を思う…主を思う、仲間を思う…
それは一国の主として成すべき諸行だ…否定しねぇ……。
だが…テメェが見てる者は誰だ? My little birdじゃない
一人しか見てねぇんじゃねえか?何故、聖を攫う必要がある?
……何故、奥州の独眼竜が飼っていると噂されてるのを
知っておきながら、真田自らが先だってこの俺に赴かねぇ…」

「!……そ、それは…」


「それに甲斐の虎も忍を使って聖を攫わせた、虎の名が聞いて呆れる」
「なっ…」


 政宗様の言葉…何故だろう…彼は幸村さんや
信玄さん、佐助さんらを深く批判しているように見えた。


「…この竜にはな、テメェの言ってる事が全て
そこの武田のおっさんを庇う言い訳にしか聞こえねぇな
敬愛する主の為…その為に…聖は『仕方ねぇ』で済ませるのか…」

「?!…政宗殿!某は、決して…そのような…っ!!」
「Ha……!」


「マズイッ!構えろ旦那!!」
――ジャキンッ…ダタッ!!


 政宗様の言葉が…深く、蒼空を失った時くらいに

衝撃を胸に痛いくらい…苦しいくらいに伝わる…
張り裂けそうなくらい…この気持ちは
罪悪感…政宗様が、あんなにも僕を心配してくれてるから?


「…分かる気がしたなら……。俺がアイツをどれ程
思って探して……心配したか…っ…分かんだろうがァッッ!!」
――ドガァァァンッ!!
「ぐぁッ…ッ!?」


 竜の爪は深く…若き虎を引き裂きかけた
…だが、虎の牙で受け止めたから、まだ良かった


―――…けど、駄目だ…アレでは
…荒ぶる竜、戸惑う若虎…。


「!?……政宗様!武田側は本当に
争うつもりはございませぬぞ!気を鎮められよ!」
「止めるな小十郎!いくらお前でも今回ばかしは聞けねぇんだよ!」




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