〜尊いし眸〜

□伍章
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* * *

「―――…それで…此方に来た時、僕は森で高熱の侭
倒れていたらしく…丁度見回り中だった政宗様達に運良く
…かな……助けてもらったんです。だから、巨大な鳥の件に関して
奥州は何も関係ありません……鳥も…僕の友達ですので
僕から確実に言える事は、人々を傷付ける友達ではありません」

「……うむ…そうであったか」


 粗方ではあるが伊達側で話した事と近い内容で話し
それを聞いた信玄様は感極まったように自らの顎をさすり


「お舘様…っ…某、聖殿の友を奪った者共が…者共がっ
うぉぉおおおおッ!!……っ、許せませぬぞぅぉぉおおォオ!!」

「ひっ!?っ〜〜…、…ぁ」
――ポフッ…


 そして幸村さんは感極まり過ぎる……突然、大きな声
…一応、僕が寝かされて居たのは頭上に鎧が置かれた広間
辺りには響き渡るし幸村さんの近くだった

 なので僕の鼓膜が破れるかも、と思う位の
貫通する直前に両耳がサッと塞がれた。


「…ごめんね…旦那の声、馬鹿デカいから
また君をびっくりさせちゃったね…ホントごめん…」

「…ぁ……いえ、大丈夫です。有り難うございます…佐助さん」

「あっはは、どう致しまして」


 幸村さんの声が右から左へ貫通する直前
僕の耳を塞いでくれたのは何時の間にか背後に居た佐助さん
…やっぱり忍なんだ…随分と印象はかけ離れてるけど。


「幸村よ!その心意気や良し!なれどお主は何として聖の力となるのだ!」

「はっ!お舘様!某…この地に来て間もなく、不安もございましょう
聖殿の力に、この幸村はなりたいと思うのでございます!
…何と言いましょうか…奥州の独眼竜が、何故に
返答を否一点張にしたか…今なら分かる気がございまする
……某も聖殿の事を放っておけないと言いましょうか…その……」
「…………」

「…へぇ〜…珍しいね、旦那がそんな大胆な事を言うなんて」

「……?…」


 幸村さん…何か必死に信玄様に語ってますが、僕…
佐助さんに耳塞がれたままですから何言ってるか分かんないんですが。


「『小鳥の君』と言われるだけあり申して…不思議な双眸に宿る光
…触れたら直ぐに壊れてしまいそうで……た…例え男子であろうと
某も漢!聖殿の事情を知った以上、某"は聖殿の友"として助けになりとうござる!!」

「!……、友ね……この短時間で少しは、なんだか
成長したね…旦那…俺様、ちょっと感動しちまった…」

「……幸村さ…ん…」


 佐助さんがあんぐりしながら僕の耳から手を下ろした
タイミングは幸村さんが"例え男子であろうと"
と言う台詞からで…僕もびっくりして何も言えなかった。


 "友"と言う言葉、友達…酷く
嬉しくて…何故だか…悲しかった…。




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