〜尊いし眸〜

□壱章
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 警戒しながらもその人物の様子が可笑しく事に
取り敢えず二人は辺りを注意しながら駆け寄った


「…まさか、さっきの鳥が化けた…なんてよしてくれよ……」

「……!…この痕は…」
「小十郎…どうした」


 小十郎が膝を付いて その人物を見たところ、端麗な顔立ち
見た目は十代後半と捉えた…だが、彼の正体は聖…

 しかも聖の腹辺りには、ものの見事にくっきり服の上から
八の字の様な啣え痕があり、もしもあの鳥が聖を
啣えていたのだとしたら位置的にも合うと小十郎は見ていた。


「いえ…あの鳥が頭上を飛んでいた時に、何かを
啣えているのを見たのですが…この残った
この痕を見る限り、もしかしたらと思いまして…」

「おいおい…Jokeは止せよ、と、言いてぇが……俺も見ちまった
否定は出来ないか。…おい起きろ、大丈……ん?…熱い」


 何にせよ、彼らにとっては気絶している聖も
正体不明の人物に変わりなく仕方無しに起こそうと
政宗が肩を揺すった、が、手甲越しながらも
熱を感じた…小十郎も政宗の言葉を聞くなり
聖の肩を支え額に手を添えると異常だと悟る。


「……かなりの、高熱に蝕まれております…顔色も悪い様で」

「おいおい…こんな所でまさかの病人が行き倒れってか…?それこそ…」
「ゲホッ、ゲホッゲホッ…」

「!……」
「…大丈夫か、聞こえてるなら返事だけでもしろ」


 聖が咳き込む姿を見て、生理的現象でも目が覚めてくれないか
小さく肩を揺らし、何とか名だけでも聞き出したかったが

「!……ぁ………ぉ…、ゅ………」

――――…うっすらと瞼を開け何か僕の目の前で言われてる
言葉に応えたかったが思考が侭ならずにただ
僅かに認識出来た物しか言葉にならず
そこで、意識というものは完全に途切れた。


「……、…聞こえたか?」
「申し訳ございません…聞き取ること叶わず…」

「……そうかい……じゃあ、仕方ねぇな…」

「…政宗様?」


 政宗は忽然と聖を抱き上げた
それには当然、小十郎が驚くが


「何ぼさっとしてんだ小十郎、早く戻るぞ?
俺達の目の前で勝手にコイツに死なれちゃ目覚めが悪いだろ」

「それは……そうですが正体も分からぬ者を城に招き入れるのは…」

「Ha…らしくねぇな、お前もさっきのコイツを見ただろ?
この侭、此処に放っておけば確実に死ぬ
…なら、俺達が拾い暫くは飼ってやろうじゃねぇか……
心配なら逃げない様に、腕なり足なりを縛っても構わねえ…OK?」


 何故か愉しそうに言う政宗を見た小十郎は諦め半分に
『仕方のない方だ』と言い、己が
注意してれば良いと意思を固め、元来た道へと戻って行った。




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