薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜
□六
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元冶元年 七月中期
…千鶴ちゃん……。
縁さん……私、縁さんや新選組の力になりたいんです…っ
……少しでも良い…皆さんの助けになりたい…。
……………。
それは突然の知らせ…否、時代の流れ故
避けて通れない道…人が選ぶ道…。
* * *
「遅い」
「……申し訳ありません…もうお集まりのようで
幹部の皆さんが、と言う事は大事な話しでしたか」
部屋に入ったら、まさに眉間に皺が深く刻まれた
鬼の形相こと土方副長が居ました。
「当たり前だろ…伝令を聞いたら早く来い、お前にもちゃんと耳に入れとかなきゃならねえ事だ、縁…早く座れ」
何時もながらに俺の仕事をこなしていた所に伝令隊士が
副長の命により幹部格隊士は速やかに広間に招集との事です
と言われ、一時、自分の立場が
果たして幹部格と同等のものなのか
集まるべきものなのかと、今更になって悩んだりしていた。
「遅れたのは仕方ありませんよ……池田屋事件以来、長州藩の強警戒に伴って怪我をして帰ってくる隊士や事件の怪我が治りきっていない隊士とか、沢山居るんですから…」
「お医者さんって本当苦労する仕事だもんね?
僕は、良く縁君にお世話になってるから、その苦労は分かるよ?」
「……分かるなら、医者の言う事は聞いて下さい…この時代故に医療機器が無いだけでも、俺自身の判断では確信が無く心許ないんです…だから、総司にはもう暫く安静にしていて欲しいのですがね…」
「だって、平助」
「お…俺に振るなよ、言われてんのは総司だろうが!」
「いえ、平助もですよ…鍛錬も控えて下さいと何時も言っているでしょうに…左之さんと新八とで暴れまくって…心配する此方の身にも」
「ぅぐ……だって俺に大人しくっつーのは性に合わねえよ…」
隊士の命を任され、幹部をも補佐する立場
こんな状態ではどっちが上司か部下か解りやしない
「……、と言う事なんで俺が遅れる時は
そんな感じなので大目に見て下さいね?」
「はあ……ったく…情けねえ」
こうも言われては副長も頭が上がらないと御様子のようで…
とても呆れた様に彼は長い溜め息を吐いた。