薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜
□六
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「……、…落ち着いたか…?」
「望むままに…頂いてしまったのですから
俺は嫌な程に大丈夫です。…けど……一が」
「一度、経験すれば対応にも慣れるものだ……
縁が治まったなら他に問題など何も無い…」
「!……そう言う事を聞きたい訳では無いッ
…自分の身体の事なのだから…一も分かっている筈です…」
数分か数十分位だろう経った頃、俺の気は鎮まった
……我ながら、ずいぶん喰い付いてしまった
「……まぁ…確かに前よりは…少し
多めに持っていかれたようだな…」
血は自分でも分かる程…凡そ200〜400cc程
間違いなく呑んでしまっただろう…
当の本人、一も少し壁に背を預ける様にして青褪めた顔だった
「……すみませんでした、知らずの内でも…
俺は欲に抗わず、耐えようとも…しなかった…」
「己を…遜っても何もなるまい……こちらが
解っていて行った結果だ…お前に非は無い…」
話している間に手拭いで一の首筋を止血したが…
彼の言葉一つ一つに一々反応してしまい、手先が震える
「……分かっていたなら、俺を放って置く
選択肢を選んでも良かったんですよ…」
咎を述べない事が怖い…云えば良い
それが自身が侵した事なのだから…
「俺は…俺を止められる術を知っている……幾ら…身の苦しみや痛み乾きに…喚こうが、足掻こうが…それは血を欲してるだけ…這い蹲ってでも自然と手が動き…傷を開き血に俺は歯を立てて、満たしているに過ぎない…」
血相が悪い一を見ていたら…今にも消えそうで怖いんだ
俺は、いくら傷付こうが痛みでまだ命が在る事は嫌でも解る
だけど、自分では無い者の身体なんて
腹を開かない限り解る訳がない……
何時心臓が止まるか分からない
何時、人の生命の鼓動が聞こえなくなるのか分からない
これは医者をやってきた経験で嫌でも見てきた。
人と言う生き物の仕組み
心臓が止まれば死…脈や息…
血を多く流しただけでも死に繋がる脆い命
「…そんな事…百も承知の上だ……だから、俺にとって縁を治められる術はこれしか知らない…だからそうしたまでだ」
「!!……軽々と…そんなこと…言わないで下さい…」
「…………」
「こんな……こんな…っ!!……俺は……また…何時か…
どうしようにも、繰り返す、だけなのに…」
最早、自暴自棄に陥って、一に
それをぶつけている俺は何と弱い事か…。
「……、それでも…縁に身を預けたのは信頼…否…衷心からか…」
※衷心(真心、思いやる心)