薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□五
1ページ/19ページ








ーーー…幸福に思え…






(…嗚呼……また…)








ーー……縁…お前が、唯一…この遺伝子を……種を…








(くだらない…夢…)






ーー……"浪神鬼"を…その身に……"古"の……仔を…血を……還そう……





『ナミキ』

 聞いた事があるこの言葉、何度も
夢で聞いていたのに…今になって
…何故…俺が"咎"を感じなければならない

何故、貴方は弱々しくなってゆく

どうして他の研究者達は功や欲ばかり。





ーー…最高傑作なんだ…お前は人間を越えた生物……
簡単に死なせる事は出来ない………何時か…お前が…私を……ーーー









 この時はよくわからなかった
彼らのことを…愚行だと感じていた…

…だから俺は……人間が嫌いになった……筈だったんだ。







* * * * *


***


「……、嫌な…夢…」


 久し振りに見た夢…いや、何時も見ていた
だけど記憶には置かれずに直ぐ消えていく夢だから覚えが無い


「…ぁ…、……」
「スー…スー…」


 しかし、ふと俺の腕の中に居る人物を見て考えは別に飛んだ


「……千鶴ちゃん……俺達は昨日…そのまま…か」
「…スー……ん…」


 ふと昨晩の記憶が蘇るも彼女の寝顔を見たら
燻っていた気持ちが何となく落ち着いた


「……ありがとう…」


 穏やかな気息を立てて眠っている
千鶴ちゃんには自然と頬が綻び、彼女の頭を
柔らかく撫で起こさないよう布団からそっと出た

 先ず…向かうは縁側。


ーース……カタン
「…おはよう縁君、昨晩ちゃんと眠れた?」

「おはようございます…俺の睡眠はちゃんと取れました……
総司の調子も良さそうで何よりですが…覗き見は楽しいですか?」


 襖を後ろ手で閉じた後、視線を横に向ければ
総司が壁に背を預けている姿が視界に入る


「心外だなあ〜、僕、せっかく君を心配してたのに」

「……すみません…」


 心中が余り穏やかじゃない為
昨日見た夢もあったが無意識に憎まれ口を叩いていた
俺自身が情けなく顔を俯けたら
総司が取り直すよう小さく笑いを零していた。


「ごめんごめん、そんな顔をさせるつもりはなかったんだけど
…少し庭に出て話でもしよっか?立ち話も難だし」

「……はい…」


 多分、総司は俺に気を使った…彼の性格には合わないが
此方としては話が早くて助かる分もある
……昨晩の事を聞かなければならない。

ーー…あの後の土方さんの事もあるのだから。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ