薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜
□五
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山南さんの笑顔は最近、何処か
親身的に感じて苦笑混じりに息が小さく漏れた
「山南さん…俺の顔はそんなに疲れた表情でもしてます…?」
「いいえ…少なくとも女性と間違えるくらいには…他の男性よりは綺麗な顔立ちですよ?」
「……え?…は…はは…。山南さん…もしかして…もしかしたりしてますか…?」
「?…なんの事でしょうね?」
だが一転として笑みが意味有り気な表情に変わった…
言葉遣いもまた然り、手玉に取られちゃ、訳もないな。
「…すみません、なんでもないです……嗚呼、後…この薬を
夜寝る前に飲んで下さい…
神経症の病状にも併せて新たに調合した薬です」
「…そうですか……ありがとうございます…」
だが気にしても仕方ない、例え知られてようと無かろうと…
何時かは知られる日が来る
「…いえ…。では…」
「…、……」
それは新撰組に関しても同じことだから…。
* * * * *
***
「…い"……っ…」
「頑張って下さい、あと二針だけで終わりますからね」
「は、い…っ…」
山南さんの往診を終え
救護室に戻ってからも体調を崩した隊士
巡回途中で浪士と斬り合い怪我をする者が後を絶たなかった
―…カチャ
「……終わりました、良く耐えてくれましたね
…お陰で此方も難無く事が進みましたよ」
「ふう…い…いえ、俺の方こそ治して頂き有り難うございます
…組長や仲間に聞いた通り…本当に見事な腕前で…」
しかしこの者で最後、彼は
二番組の隊士で名前は確か辰箕<タツミ>と言う名だった
「まだまだですよ…俺以上の腕前の持ち主は幾らでも居ます」
「そうですか?俺は雪浪さんの腕前が一番だと思えます…現に池田屋の時なんて医術の腕以上に剣の腕も確かかと…」
彼は、よく怪我をするとは言うのも仲間思いが故のこと
庇ったりもすれば、自身を守るのは難
当然と言えば当然か…まあ、俺は
そんな彼を嫌いじゃない、どう成長していくか楽しみな子。
「辰箕さん、幾ら何でも買い被り過ぎですよ
そんなことを言われたら新…永倉さんに恨まれそうですね
ーー…さて、包帯も巻き終わりました、これで大丈夫ですよ」
「ありがとうございます…嗚呼でも、永倉組長が
雪浪さんを嫉み等で恨むとかも有り得ないと思います……次いでと言うと原田組長も」
ガーゼ代わりの清潔な布の上から包帯で縫い口を保護した後
辰箕さんの面白そうに話す口振りには首を小さく傾げた
「…何故です…?」
「…何故……でしょうね?…俺も噂を小耳に挟んだだけなんですが
なんでも雪浪さんは組長達に一目置かれてるとか」