薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□五
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「いえ、俺の自己判断ですよ、山南さんの
身体に余り負担を懸けたくなかったんです…
だから気にしないで下さい」


 彼の目の前に腰を下ろしたものの
調子は相変わらずのよう


「……縁君には何時も迷惑を掛けますね…」

「いいえ…そんなことは全くありません…。
では傷の塞がり具合から神経の状態等を触診しますので
上着を脱いでもらえますか?」

「ええ…分かりました…」


 なるべく、気持ちからも負担を懸けさせたくないので話を
一転変えて診察を行う事にした


「「……………」」


 暫くは無言の間、山南さんの
肩の傷跡は残りしも外観は綺麗に治っている…


「……?……」

「…………」


 だが、肩の動きがおかしい…前までは
肩の高さまで腕もあがっていたのに
今は余り上がらず筋も堅くなっている。


「…山南さん……最近無理な運動をしませんでしたか?」

「………、何故そんなことを聞くんですか…?」

「俺が診た限りでは少しおかしいと思えまして
……それに皆さんと食事もちゃんと取れてませんね?」


 俺が答えを言い終えた後、山南さんは
軽く顔を俯けて、苦笑を浮かべていた


「……ふふ…縁君には本当に適いません…」


「ーー…無理をしたんですね」

「ええ……自分がどうにも…何時も以上に情けなくてね…」

「……そう…ですか」


 俺の言葉と同時に診察を終えた、山南さんから
これ以上、何かを聞く事は出来ない
俺自身が早くなんとしてでも、もう…あの薬を利用してでも

 新薬の開発を考えなければならないか時期だ。


「…何も…問い詰めないのですか…?縁君にとっては…」

「何を言ってるんです…俺にはそんな権利などありはしません
……俺に貴方を満足させられる医術が無かった
…無力だから…貴方をそのようにさせてしまった」

「……………」


 何時の間にか俺が切羽詰まった声になっていたのかもしれない

…俯けてた顔を上げた時、間近くに
山南さんの顔があって思わず瞬いて、目を見開いた。


「?…山南…さん?」

「……君は不思議な方ですね…隊士以上に寝る間も惜しみ
…酷使し、働いている…縁君の方が何時か倒れるのではないかと私が心配です…」

「?!……俺は…別に……」


 俺の額、山南さんは余り動かせない筈の
左手でそっと添えてきた…驚いた。

がーーこの手は……やはり温かかった。


「貴方も…無理をしてはいけませんよ…君のような方は特に
…顔にも言葉にも出さないから
…他の人に悟られないかも知れませんが、分かる人には分かるのですよ」
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