薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□五
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「……。そろそろ…持ち場に戻ります……
最近、山南さんの様子が気になりますので
…早く…どうにかしてあげねばなりませんから…」

「うん、頼むよ…出来る限り手を尽くしてあげてね
……あの人…案外一人で考え込むから。
唯一、頼りにされてる縁君だけが…僕達も頼りなんだからね」

「どこまでやれるかわかりませんが
…承知しました…。ーー……では、失礼」


 長椅子から立ち上がれば総司に一度、頭を下げた
これを見た彼も微笑みのみを残して俺の背を見送ってくれた。



「ん〜……良く働くよね…何時か倒れないかな
ーーー……ね?…土方さん?」


 総司が、ふと変わって視線を向けたのは
此処からでは死角として見えない木々の間…。


――ザッ…
「チッ……、俺に振るな」

「あれぇ?…てっきり縁君に心配させまいと思って土方さん
そんな所に隠れていたんじゃないですか?」

「……縁から見ての……死角なだけだ」

「ふうん…そうですか…。あ…貧血気味にはなりませんでしたか?
縁君、結構、持っていきますよ?それで僕の所に後から来て薬やら何やら押し付けられましたけどね」

「阿呆…俺はそんなに貧弱じゃねえ…
それに、薬なら【石田散薬】があるだろ」

「土方さん、拘泥ですね?石田散薬は不味いから
僕は苦手だなあ…それなら、まだ縁君が
調合してくれる薬の方がマシですよ。
しっかり効き目があります、でもちょっと眠薬も混じっているみたいだけど、害もなかったしね」

「……、良薬口に苦しだ、ガキみてえな事言ってんじゃねえ」


 何時しか土方さんと総司とで並んで
縁の消えた方向を二人は他愛もない話をして暫く見据えていた







* * * * *


***


ーータッタッ……タ
「山南さん…居ますか?」

「縁君…ですか……どうぞ、入って構いませんよ…」

「……失礼します」


 山南さんの部屋の前に立って入る許可を聞けば中から余り
元気の無い声が一応返ってきたので遠慮がちに入った

ーーススッ……カタンッ
「縁君が私の部屋に来るのは初めてですね…?…どうしたんです…?」

「突然、失礼しました…山南さんの具合が気になったので
往診に参りました、…今は、大丈夫でしたか?」

「…そうでしたか…態々すみません…
言ってくれれば、私から行けたのですが…」


 言葉を誤ったか…元気の無さは
表情にも現れている…最近の山南さんは
少し窶れていようが気もしてならない…。
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