薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□五
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「……、縁君はさ…」

「!!……」
―スッ…

 総司は何の前触れなく昨晩に
俺自身で傷付けてきた側の腕を忽然と掴んできた…。


「自分自身を、傷付けても…誰かに傷付けられたりしても…この手は…人を助けれるよね」

「…違います……俺は」
「ううん…助けられたよ?…少なくとも、僕は…」

「!…」


 その折、総司は有無聞かずして
腕の包帯を解き、端から見ても
まだ皮膚が抉られたような生々しい腕に唇を添えた。


「いけない子だよね、縁君は…何でも独りで…済ませようとするんだからさ…」

「っ……、ですが…」

「土方さんからも、キツく言われたんでしょ…?」

「…………」


 こんな腕…穢れた手に………総司のような
綺麗な人が触れない方がいいのに
彼は比較的、穏やかな顔をして
ーー……そんな顔をされては、断り辛い。


「僕の前では我慢しなくていいんだよ…縁君が苦しい時や欲しくなった時は…僕が君を助けてあげる」

「!?」


 相応に総司の瞳が吸い寄せられるように
儚く触れられた箇所が、疼く


「人を助けることは出来ないけど…仲間である縁君なら、僕は助けられるから…」

「…まるで…俺が…人ではないから…と言いたそうですね?」

「さて……どうだろう?僕は君が何者だろうと構わないよ?
…縁君は縁君なんだからさ…?」


 こんな躯が人では無いのは重々承知している
…だからこそ、それは俺が心の奥底でまだ求めている所為…。


「……、総司…あまりこの状況は関心出来かねます
………仮にも男同士ですよ?」


だから長く人に触れないほうが良い…それが互いの為…


「大丈夫、身体は女でしょ?……ぁ…でも僕は別に縁君が男だったとしても構わないけど?」
「ーー…頼みますから絶対人前で口を滑らさないで下さいよ」
「ははっ、大丈夫だよ」


 総司には程なく気を抜かされた気がした…
彼の言葉がどうにも柔らかく聞こえ過ぎて
気が抜けたのだろうか…俺も少し肩に力が
入り過ぎていたかも知れない。


「大層な自信ですね………でも…ありがとうございます…」

「!…うん、縁君にそう言われるとなんだか嬉しいな」
(っ……何故か…辱められた気がしてしまいましたね…)

「ん…?どうしたの?」

「いえ…なんでも…」


 最後に俺が感じた総司は何処か
俺自身に似ているような気がした…

まるで、居場所が此処…新選組しかないようで…。


 俺もただ、心を彷徨わせてるような
孤独の置き場…それが新選組の壬生狼の魂は今もある。
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