薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□五
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「……総司から見て…俺を、どう思います…」

「急だね……どうしたの…?」


 縁側から離れた庭先に置かれた長椅子に腰掛けながらの質問 
総司は不思議そうに見ていた


「知ってますよね…?…俺はまた……」

「…土方さんのこと?」

「……ええ…一や総司では飽きたらずに…ね…」


 何となく喉元に手を添えた…まだ喉に
通って行った土方さんの血の感覚が残っている
勿論、目の前に居る彼の血も、一の血も…
人の血は、忘れられない味なんだ。


「ふ〜ん……じゃあこの侭いけば他の人達からも
貰っちゃう可能性があるって事かな?」

「そうですね、否定出来ません……俺のしている事は
そんな生易しいものじゃない……正確に言えば
……奪う…に、なりますかね……皆優し過ぎる。
自我を失うのが怖いから…そんな…言い訳みたいな勝手…ですよね…」

「…………」


 それは後ろめたさ…総司はただ静かに話を聞いてくれている

…だけども、忘れられない、今の俺にとって
自分の血は…もうその場凌ぎのモノでしかならない

誰かの血……否、純血な人間の血が
唯一にして己の意を繋ぎ留められるものになる

 この躯が、もはや人の躯でない以上
繋ぎ留められる方法がそれしかなかった。


「…医者なのに……駄目ですね…この様では…」

「……どうして?」

「腐っても医者は、医者です……元々、俺は自分の躯を治す為にこの道を歩みました…だけど…自分の事より誰かを治し、助ける事が出来ることにも俺は何処か誇りを見いだせた気がしたんです。……例えるなら…只の田舎侍が何時か立派な武士となり……志…武士道…何かを目指すように…」


 世の中にはどうにもならない事が沢山ある…覆らない現実も
だから、新たな道を見つけたと思っていたのみ…


「…へぇ……やっぱり、縁君って…凄いね…」


 これを聞いていた総司はふと
今までに無い優しい笑顔を向けてきた


「総司…」

「本当にそう思うよ…僕にはそんなこと考えられないな。
縁君の様に…僕たち新選組は人を助けられない…この手は人を
殺すことしか出来ないんだ……でも、縁君は助けられる手だよね?」

「!……いえ……助けられる手など……
そんな大層な物、俺は持ち合わせてません…」


 しかし俺はそんな笑顔から視線を逸らした

見られない……どうして総司が
そんな笑みを浮かべられたのか解らない。
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