薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□序
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「……もう彼岸花の咲く時期でしたか、こんなにも紅く…」
―ヒュゥゥウゥゥ…





ーー……め……―


「!?…っ…」



 夕暮れ時、帰り道に見掛ける池のほとり 
その周りに囲う様に咲く赤い彼岸花を眺めていれば突然



 頭痛と共に声がした…。






 ごめん…ね…


……こん…な……子にしてしまって…









 ごめんね……貴女を…こんな風に変えてしまって…

















 ごめんね…








 ……ごめんなさい…











 せめて…貴女には、人との繋がりが……籠る……意を…。











 どうか…人の……愛を知って…











 人間は…愛しい……例え…醜く……狂った者でも……


 でも私は…貴女を一人の…娘として……。




 貴女が……私たちを、憎んでも…構わない…
 私たちは…愛して…いるから………ーー。








「!……ッ…ぁ"?!……く…」
―ザッ……バタッ…


 彼岸花の中、苦しい表情をしたまま
黒いシャツには異常に白い肌が目立つ人がその中に倒れ。


――…ザァァアァァ……



 霧のように消えてしまった
 その囁かれた、誰かの…懐かしき言葉と共に。


















* * * * *


***


 文久三年 十二月


「……、あ……何時の………?…おや…此処は…何処で…」


 頭を抱えて目が覚めたものの
自分の目に映ったのは歴史的木造の町並み。


「…暗い……マジですか?凄い…寝ている間に映画村なんてベタに行ける筈ない…」


 以外に頭は冷静だった、辺りは暗いが今迄
目を瞑っていた所為でもある為か
夜目に慣れていて町並みが直ぐに分かる。

――タッタッ…

 周りを見るからに町中と言うだけあるだろう
この場で、まずは道路では有り得ないであろう人通りも
何故かないので胡座を掻きながら頭が途方に暮れ掛けた時。


「……あ…あの…」

「ん?……ぁ…」


 突然、待ってましたとばかりの人の声
その方へ顔を向けてみれば先ず
淡い桃色の着物に袴の服装が目に映った。


「す、少しモノをお尋ねしたいのですが……
この辺りでお安い宿を知りませんか?
…私、この京には初めて来た者でして…」

「!…あ、嗚呼…すみません、俺も此処には
初めて来た者だから……実は…よく分からなくて…」

「えっ?…貴方も初めて来たんですか?」


 驚く彼女に頷くも、しかし、それより自分の内心では
彼女の口から出てきた"京"と言う言葉が引っ掛かった。
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