薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜
□序
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――シャンッ……ビチャッ…
「!?……っ…」
「え……?」
狂い人は三人、その仲間に隙を付かれ斬り掛けられる寸前
先程よりも鋭く…より眩しい白光に
両断された身体、彼らの返り血が噴出す様に掛かった
―カシャン…
「あーあ、残念だな……」
そして、何事も無かった様に納められた刀と
目の前には再び浅葱の段だらを羽織った二名
「僕一人で始末しちゃうつもりだったのに
斎藤君、こんな時に限って仕事が速いよね」
先に口を開いた茶髪の青年は何処か
恨み言でありながらも顔は微笑んでいる
「俺は務めを果たすべく動いたまでだ……あんたと違って俺に戦闘狂の気は無い。……それに…恨み事なら目の前の彼も同罪かと思うが…?」
「うわ、酷い言い草だなあ」
「勝手に同罪にしないで下さい」
斎藤と呼ばれた、もう一人の紫掛かった
長い黒髪の青年の言葉に思わずして
茶髪の青年と言葉が被り彼は面白そうに笑った。
「……否定はしないのか」
「でもさ、彼があいつらを殺しちゃって僕らの役目を取られてたかもよ?」
妙に無邪気で楽し気な目の前の彼の言葉には
眉を歪め無意識に手に付いていた
返り血を舐めとりながら何とか内心で自我を保ち直し。
「………、失礼な…死んでるのは其方が斬った二人だけだ…」
彼らが斬った、同じ浅葱を羽織った
浪士を横目に一度千鶴の方へと一瞥した後
目を見開いたまま気絶している
"まだ生きてる"浪士に視線を配った。
「ん?……あ、本当だ、君…こんな狂った奴
気絶させるなんて凄いね?一体どうやったの?」
倒れている浪士を一目見ただけで納得する彼は尚更
嬉しそうに笑みを浮かべ、斎藤と呼ばれた者は眉間に皺を寄せていた
「……俺からも質問をさせてもらいたいのですがね…?」
「……残念ながらその問いは俺達が下すべきものではない」
「?……、!!」
斎藤の言葉には更に自分の眉間にも
皺を濃くしてれば、また、反射的に手が動く。
ーーキィィンッッ
「!…、……」
威力からして殺すつもりはなかったらしいが…
しかし…俺の頸筋近くで受け止めた刃が耳で鈍く響く。
直ぐ隣りでは、月光に輝きに靡く漆黒の髪が視界に入った…
今にも無い筈の桜吹雪が共に舞いそうな…そんな喩え人。
「……へえ…そこでへたりこんでる奴と違い
お前は格好からしても唯者じゃなさそうだ…」