薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□拾五
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「…しかし……何故
その情報を…俺に…?」

「…これでも…俺や斉藤は
テメェを信じてる…
テメェのその口の固さも…な」
「………」

「……勿体無い言葉だ…」


ふ、と…二人は柔らかな
表情に変わった

勿体無いない
本当に…お陰で渇いた心は
満たされた気分だよ…


「勿体無くねえよ
足りねえくらいだろ?」

「……足りないと言ったら
欲張ってしまいそうだ…」

「……縁のその意地は
筋金入りだな…」

「……はは…どうでしょうね
…こんな意地、簡単に
緩んでしまいそうですよ…」


しかし、心が満たされても
躯は満たされてくれないか…

血の味を覚えてる二人から
そんな言葉を貰ったら
否定する躯は欲しいと喚く…


「…縁……」
「………」

「でも……大丈夫です
俺は何度も
貰っては駄目になる」


「……人としてか…?」

「ええ……まあ…
それ以前の問題ですけど…」


どうせ、この躯は
人の物でない

他者の血の交わりで
己を繋ぎ留めるなんて
人間じゃない

いや…もとから、この躯は
人間の身体として機能してない


嗚呼、そうだ
今更過ぎて…嘲笑える


―トクン…ドクン……
「!!……っ…」

「「!?」」


「……俺も…信頼すべき人以外
…この事は……伏せないと…」


でも、認めない…
人として在りたい


「…俺達の前では
無理はするな、縁…」

「お前が倒れては
洒落にならん」


「………」


揺らぐ、俺の内で
血を欲する化け物のような
穢れた感情が…

だが殺さないと…


…そうでないと、何時か俺は
この優しくて…大切な人達を


喰らい尽くしてしまうだろう…



俺は、失った
喪失感を味わいたくない

自ら孤独に溺れたくない



虚しいのは嫌だ

悲しいのは嫌だ



大切な人を喰らい
失ってしまうのは…嫌だ…


(……血が…欲し…い…)


あの渇きが嫌なんだよ、俺は

でも苦しいのも痛いのも
もっと嫌なんだよ…


―スタ…
「……仲間が辛い思いをしてるのを見て…これほど苦しい事はない……縁、大丈夫だ
俺はお前を信頼してる」

「…一……」


「テメェが思ってる程
斎藤や俺は脆くはねえよ」

「…は…っ……はは…」


いっそ、誰か
この感情を殺してくれ

誰か穢れた俺を殺してくれ


そしたらこんな思いをせずに
済むのかも……知れない。





to be continue…
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