〜尊いし眸〜

□十伍章
6ページ/6ページ



政宗様も僕を壊れ物を
扱うかのように優しく起こし

確かめるかのように…

……離さないかのように
強く抱き締めてくれた


「…政、宗……様……っ」


…無性に離してほしくなかった

動かない身体が…呼んでも
返事がない鋪乃の声が…

久しぶりの孤独が怖い…

一人が怖い…


…一人は嫌だ…



「………泣く程…俺に、会いたかったか…聖…?」

「会い……たか…った…っ」


「…an honest person……that
sweet a cry<正直者が その愛らしい鳴き声>…双竜だけに鳴け……他の奴に聞かせるなよ…」

「……は、い…」


だから…今は、どんな形で
あろうとも双竜に縋る

何処にも行ってほしくないから
今晩だけでも
共に居てほしいから……


「……小十郎も離れて控えてねぇでこっちに来いよ…a spoilt child little bird<甘えん坊な小鳥>が寂しがるだろ」

「……小十、郎……さ…ん?」

「……、それは…
貴方様でございましょう
小鳥を抱いて離さぬ政宗様の
邪魔をするなど、この小十郎、
些か気が引けますな…?」
「HAHA! se vere?<手厳しいな>」


「また意味の分からぬ事を…」

ふと…人が一人分通れるくらい
開いた障子の
向こうの縁側か…

…背を向けた侭
横顔を振りむけた
小十郎さんと目が合った…


「素っ気ねぇな?そんなんじゃ
聖も寂しいよな…?」
「…ま…政、宗……様…?」


が、突然政宗様に軽々
抱えられると、彼の膝の上に
背向けたまま乗せてくれた…


「……座った体勢は辛いか?」
「…大、丈夫…です……」

「はぁ……政宗様…聖に
無理をさせまいますな…」

「じゃあお前もこっちに来いよ
そんで小十郎は俺の背をな…
どうだ?昔みてぇに……」

「!……小十郎…さん…」


心配そうに見下ろす政宗様には小さく笑って首を横に振り

彼が続けて紡いでくれた
言葉には笑顔で
小十郎さんにも向けた…


「……、…どうやら
寂しがり屋な小鳥だけでなく
甘えたがりな
竜も居たようで…」

「良いだろ、偶にはな」

「ふ……。では背中を失礼
政宗様も聖と共にこの小十郎の膝にお座り下さいませ」

「okay!Thank」


小十郎さんが政宗様の背中に
回ると、政宗様は
面白そうに彼の膝に座り
少し僕を座る体勢から
政宗様の上で寝かせてくれる
体勢に向けてくれた

「………そう…りゅ、う…」

『…?…』

「……いっ、しょ…に…ぼく…も
…双、竜…と……ちゃん…と」
「……当たり前だろ…お前が
籠から逃げたりしたなら…
竜は地の果てまで追い掛ける…絶対に捕まえてみせるぜ…」

「…小鳥は…安心して竜の迎えを待て…お前は何時までも竜の傍で羽ばたいていれば良い…」


間近くの距離…温かな二人の
温もりは何時にも増して
僕を安心させてくれた…

身体を気遣いながら僕の手を
握ってくれる政宗様の手
優しく頭を撫でてくれる
小十郎さんの手……


「…はい……いつまで…も…」


どうか眠りに付くまでは…
我が儘を…

僕を見てくれる…双竜……


「………、……」

「……、?…寝て……
!…聖……」


……また間違えるけど…


「政宗様……。聖はまだ…
…泣いて…いらっしゃるか…」

「…小十郎…俺は……分かってやれてねぇのか……俺が…」
「それは……違いましょう
小鳥は……竜を…
離さないのですから…」

「………Ha…そうだな…
本当に…儚い……little bird
いっそ…翼を喰らって
人間の目に届かねぇ
…竜の巣に隠してぇよ……」



生きる応え

…必ず見つけるから




…双竜の元でちゃんと



役に立って…

出来る事を見つけて…

また傷付いても構わないから…
竜を護る力…生きる強さ


双竜に相応しい鳥に…



そう……小鳥として…


何時死んでも構わない感情を

竜の変わりとなる為の命を


……歪んだ感情でも良い…


所詮、竜のように

"鳥は天を翔れない"

蒼空には無茶をさせない…


僕には…充分なんだ…


これしか出来ないんだ…






――…生きる意味なんて…







to be continue…
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ