〜尊いし眸〜

□十泗章
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何だか浮遊間が消えなくて、ふと下を見下ろせば大絶景…?

否、高所恐怖性の人間にとっては恐怖だけでしかない
小太郎に抱えられて足元も何も足場さえ悪い栄光門の上は
怖いだけの場所


「…こっ…ここっ…小太郎ッ…
は…はははッ…離さないでっ…
ぜ、絶対にお願い…しますっ」
「?!……、…(ナデナデ」


この恐怖から逃れるには抱えてくれている小太郎にしがみつくしかなく、確か…この場所は彼が好きな場所だった気もしたけど僕はそんな余裕な考えなど無く

暫く小太郎に撫でられながらもしがみ続けた


「あ……ああ…あの…こ…小太郎……な、なんで僕を…こんな…た…たた、か…高い所…に…?」
「……、……!…(クイ」
「…のっ…お…落ちる…ッ」


ふとした疑問…問おうとしたが
小太郎は突然僕を支えていた
片手を離して
もう片手は背中を
支えるのみで更に落ちる恐怖に
見舞われる…

しかし彼は知ってか知らずかで
いきなり僕の腕を掴んで
数時間前に手裏剣で掠った
怪我の部位を
どこからともなく取り出した
淡い灰色の手拭いで応急処置をしてくれた


「……、……」

「ぁ…ありが…とう…」
「……、……!…」
「?」


が、小太郎は頷いた後
何かを察知したかのように
……、此処からだと東北か…バッと振り向いたので
僕も習って視線を凝らして見た


「………………」

「……あれは…騎馬隊?」
―ダッタッタ…

「忍殿ー!火急の知らせです!
東北よりこの小田原城に奇襲部隊が迫っております!」

「!!…じゃあ…あれは…」
「…、……」


斥候隊の連絡により小太郎の
気配が変わった…東北に向ける目は敵と見做す気配

この小田原城に向かってきてるのはまさか……


「至急、守りの形態に入り小鳥の君殿は安全な場所に非難させるようにと氏政様から仰せ仕りました、お急ぎ下さい!!」

―シュッ……タ
「……、?!…門の下?…こ…小太郎…何処に行くの…っ、まさか…一人で守りに行く気なの…?」
「……、………(コク」


僕を門の下に下ろし背を向けた
小太郎が遠くに見えた…

……また…知ってる人達が争う

…傷付け合うのか…
僕が迂闊だった所為で争いを
この小田原城でも生むのか…


『(…あの忍殿が頷いた…)』

「……、…(ナデナデ」
「!……こ、小太郎、駄目!
争っちゃっ…この戦いは本当なら無い筈…小太郎やみんなまで傷付いてしまう…っ…止めるっ、僕が止めるから!」
「…、………(フルフル」
―シュッ……


「!……こ、小太、郎…」


小太郎は何か言いたげだったが
僕の頭を撫でた後
首を横に振っては黒い羽を
舞い散らせて消えてしまった…

僕は止められなかった
……また止められなかった…


「小鳥の君殿、今の内にどうか
奥へ非難を…あの忍殿に任せておけば大丈夫です」

「………、はい…」


僕はこれで何度目の迷惑を
掛けてしまうのだろうか……

僕と蒼空の存在…


【大きな鳥とその小鳥】の、その存在の所為でどれだけの争いを生み出す事になってしまうのだろうか…


「小鳥の君殿は無事か!」

「嗚呼、無事だ!
今、伝説の忍殿が護衛に入ってくれてるから大丈夫だろう!」

「そうか!…ささ、小鳥の君殿
急ぎ此方に非難を!」

「…………、……」


【小鳥の君】と言われる存在が
この日の本にとって
どれだけの価値を
見出してるから知らない

どれだけ自分の存在が
群雄割拠の時代にとって
"意味有る物"かも知らない…



―急ぎ栄光門を閉じよ!!―

―栄光門を閉じよ!―



―誰一人としてこの小田原城に
踏み入らせてはならぬ!!―

―おおぉぉおおー!!―





「!……、…」


護衛部隊の兵士達に
連れられる侭…小田原の城内奥
護りある固い
部屋に連れられた

…何も知らない侭
護られるだけで良いのか…


―……キュルルルッ…
「!…蒼空ッ……お前は蒼空だよね…っ…」
―……、…聖…我は仮の姿を模した……、天翔る竜は再び怒りを灯している……。選びなさい…汝自身が……傍観か干渉か…助けるか否か…―


この部屋の小さな窓から
入って来たのは蒼空と
同じ姿をした小さな小鳥…

…基、蒼空が僕の肩に乗って問う……それを見越し…見える城下の様子、黙って見てるだけで良いのか…僕は……


「政宗様……。蒼空…」


戦が始まるのだろうか…

蒼空の言葉に東北を
見据え……迫り来るは

…蒼き集団


先頭を走るは…蒼き雷を迸る竜







to be continue…
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