〜尊いし眸〜

□十弐章
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「……分かってる…分かってる……っ、最初に
政宗様が言った事が……二人、とも……誤解、なんです…」

「…最初?……ぁ〜…南蛮語の、こと…?」


「はい……政宗様は…許さないって…"小鳥に死は早い
死場所なんて存在しない"…政宗様は僕にそう言いました…」

「?!、政宗様…っ……。この小十郎…
一瞬でも…その考え汲めぬ…俺は……愚か者でした」

「…はぁ……本当……馬鹿な竜……」


 今、考えたら政宗様は誰よりも僕の死を
許そうとはしなかった…武田軍に居た時もあんなに必死になって

 ぶつけようのないモノを幸村さんとぶつけ合って
そして、僕の居場所は、在るのだと言ってくれた…。



「………ごめ……なさ…い、佐助さん…少しの…間…だけ、許し……て…く…」
――トス…
「………当たり前…俺様が…隠しててあげるから好きなだけ泣きなよ
…"男の子"……だもん、ね……。はぁ〜……にしても、俺様も
本当に忍らしくないわ…周りが見えてなかった
……一瞬、久々に感情に流されたよ……ね、右目の旦那」
「悪い………聖……」


 何となく、感情の制御が利かなかった…だから二人の前だけで

……佐助さんの胸の内だけど、彼は拒まず
受け入れてくれたので僕は静かに今は…男として泣いた


 誰でも泣き顔なんて見られたくはないから…。


「………やっぱ華奢…」
「?…」

「………、……」



 この時、佐助さんが何かを小さく呟いた事を
僕だけは泣いていたので聞こえなかった……


 そして、小十郎さんもまた頭を
ずっと撫でてくれた事を僕は忘れない…。



 人の優しさは皆が皆…違うんだと…


あの人も、この人達も、在り方が違うんだな…。








* * *


 雲隠れの月が浮かぶ街道にて
二頭の馬を駈けていたのは政宗と成実。


「おーい、筆頭…おーい」

「………………」

「…おーいおーい、お〜い!」

「………………」


「……、梵ちゃ〜ん」
「Ah……何か言ったか…?」


「目が死んでるし……はぁ…帰ったら聖に謝りなよ?
…あの子さ、本当に人に関わること事態……なんてゆーか…
初めてで何したらいいか戸惑って、認められた場所にただ…」

「Ha 見縊るな、成実、んな事…分かってるさ…だから俺は言った…
竜の許しも無しにlittle birdが独りで勝手に死ぬ事は許さないとな」


「…え…マジ?その台詞、俺は全然聞いてないし」

「当たり前だろうが…お前に喋った覚えもない
……empty talk<無駄話だ> そろそろ陣営に戻るぜ」

「お…ちょっと、梵?!…………ったく勝手だな〜…
…聖も男の…子?……の癖に、とにかく罪作りな奴…苦労するなぁ
小十郎も綱元も俺も……だからね〜、こりゃ…いっくぜー!!」



 何を思うのか、何を思ったのか…


 知らずの内に夜晴れた街道に照らされ
駈ける二頭の馬に、乗る者もまた然り。



 複雑な思いも、これからの出会いも


 形を成すか、また崩れゆくのか…。









to be continue…
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