〜尊いし眸〜

□十壱章
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「…質問に答えろ…貴様は豊臣の者だろう……
聖に傷を付けたのは貴様かと聞いている」

「…そうだと言ったら?」

――ジャキッ
「我が軍の小鳥の君を傷付けた……その身を持って償ってもらおうか」


 そう言うと、綱元さんはドッと殺気立ち
…刀を構え刃を半兵衛さんに向けた…

 今の彼はこんなにも病弱してる…こんな状態で


 無茶だ…戦わせるのは、止めるべきだ
半兵衛さんも綱元さんも…そんな気力等…もう無い筈



「っ……待って下さい綱元さん、刀を納めて…今のこの人にもう
戦う力は無いです……僕は大丈夫ですから…落ち着いて下さい」

「……聖…正気ですか…その者は先程の小勢を囮に
私と聖を引き離し、貴方を捕らえようとした張本人……。
例え今は戦う力が無くとも…何れは必ず
貴方を狙いましょう……なれば…今の内に消した方が良い」


 まさに情けを捨てた武人の眼、そんな
綱元さんに悲しみを覚えた…彼が言うこと最もだけど

 だけど、身体が否定する。


「!……綱元さん…それでも…僕は戦ってほしくはない…」

「…聖……?」


 冷静であるけど…感情的にもなっている
綱元さんを見ていたら心配を掛けた彼にはとても申し訳ない
…だが、それでも今の半兵衛さんは一時的
病の悪化でとてもではないが戦える様には見えない

 綱元さんだって僕の我が儘により先の戦いで
疲弊してる…お互い、こんな状態で戦える訳がない。


「―――……はは、本当に…鳥は自由とでも言うのかな…
それとも…慈悲深い為か……今回は完璧に僕の負けだ、聖君」

「!……半兵衛さ…」
「今は…戻りたまえ…君が帰るべき場所に…ちゃんと…」
――ザッ……トッ


 ゆっくりと半兵衛さんは立ち上がると
その侭、弱く僕の背を押して緩く前に出る
その姿を見た綱元さんも怪訝を含めつつ此方に手を差し伸べ。


「…聖、此方に来なさい」

「………、……」


 一度振り返ると、先程とまでは違う
淡く微笑んでいた半兵衛さんに驚いた。

 が、綱元さんに呼ばれ、今度こそ彼から離れた。


「ふふ…そんな顔をしなくても大丈夫だよ、もう
…君達を狙う追っ手は居ないだろう…今頃は政宗君達の所に
仕向けた小勢も片付いてしまってる……見事に失敗に終わったよ」


 半兵衛さんの言葉は皮肉を含むが余り残念がっている様子が無い。
…疑問に思い眉を歪めつつ暗がりながらも、おそらくは
政宗様達が向かって居た方向にて綱元さんが溜め息を付く。


「なるほど…ならば、もう此処に居る理由もない…聖…早く私の背に…」

「ぇ?……は…はい…」


 屈んで背を向ける彼の表情は…なにやら
歩く事を許さないと言った様子だったので此処は素直に応じた

 戦ったばかりの綱元さんも
疲れているとは思うが…彼はそれを口にしないだろう。


「今は聖に免じてだが、次に会う事があらば…」

「嗚呼…肝に銘じよう」


 最後に去る間際、綱元さんの声は暗く怒声にも
強いもので半兵衛さんも微かに笑い混じった返答に終わり

 僕達はこの場を急くように走り去った…。










―――伊達に拾われ…飼われし、今や…人に懐き…

 国々にとっては、格好の獲物…

 左目には不思議な眸さえ持つ小鳥の君…か……

 精々、逃げてくれたまえ…

 僕達以外の人間に、奪われないように…

 何時か迎えに行こう……人間を嫌いにならないようにね


………聖君…―――。





 最後に彼が、らしくなく、儚く
こんな事を…夜空を仰ぎながら呟いていた事など知らず。








to be continue…


頑張れモ武将!モ武将でも
史実歴史を繋いで行った方だから大丈夫!(え
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