薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□七,弐
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 俺が選んだ選択肢は左之さんらが行く
公家御門へ向かうことにした…


 俺の予想ならば、本当は千鶴ちゃんまで
危ない道へと連れて行きたくはないが
…此処よりも、もっと多くの死傷者が彼処には出る


 助けられる命は僅かでも自分が出来うることはしたい。



―――…ガキンッ…キンッ…

「……まだ…競り合いは続いてるようで……」

「…だな」


 急いで辿り着いた公家御門では言葉通りまだ小競り合いが
続いてるようで、蛤御門から移動して来たらしい所司代
まだ諦めてはいない長州兵達が未だ戦いを続けていた。


「んじゃ、行くとするか、縁
千鶴はあんまり前に出るなよ、危ないから」
「…………」


 俺は頷きのみを返し千鶴ちゃんにも一度視線を向けたが
左之さんは彼女の返事を聞くよりも早くに駆け出したので
俺も千鶴ちゃんを気にしつつ共に駆け出した


 向かう場所は戦場…。




――ザザッ…
「御所へ討ち入るつもりなら、まず俺達を倒してから行くんだな!」

―カシャン…
「まあ…此方には討ち入らせる気は、更々ありませんが」


 敵の前に立ちはだかり俺達は互いに淡い微笑を浮かべた


―――…俺達は何人たりと通さない…そう覚悟を決めてるから…



「くそっ!新選組か!?」

「――死にたい奴からかかってこいよ」
――ビュンッッ
「おのれえええっ!!」

「……命を粗末にするか…これには…感心しませんよ」

――ザシュッ……ガキン、ガキンッ
「…ぐぁ…っ」


「……縁って、案外手加減無いよな…?」

―ブンッ…ザシュッ…

「そう言う左之さんこそ…返り血が早速のようですね…」

「……お前も、な!」
――ダッ…ガキンッガキンッ

「っ…なんだ、この二人は」


 怒声と刃が交わり響き
公家御門の前で乱戦がまた大きく始まった
そして御所防衛側に新選組の援軍が加わった

…それだけでも、戦局は変わった

 左之さんと俺が大半の敵を事実上
押し返していた為に敵味方入り乱れての
戦いもそう長くは続かなかったようだ。


「……最早ここまでかっ!」

「………」


 俺達が斬って行った長州藩士達が血を吐くような声で
唸る様に、このまま退いてくれれば
と、無感情に俺は視線を向けていたが…。


「逃がすな、追えっ!」


 その考えを許さないと言った所司代の役人達の声が響いた
此方としては退くならば追いかけるつもりは無い


 が―――役人の声を聞いて長州勢の殿を勤めていたのだろう
男の一人が不意に此方に振り向いて足を止めた。




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