〜尊いし眸〜
□七章
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―――…僕は今、何をしていたのだろう……
……確か……嗚呼、そうだ
…佐助さんに攫われて一日半寝込み、蒼空の事を話して…
それで、日暮れ頃…政宗様が伊達軍を率いて
武田城に攻め掛け…幸村さんと争って……
何時もと様子が違った政宗様を………止めた…?
それから……僕は
―バァァンッ!!
ギキィィイ!!ドォォンッ!
!!?……銃声………衝突音…
嫌………嫌な……夢
思い出させないで…思い出したくない…
これ以上……僕から大切なものを奪わないで…
取らないで…奪わないでよ………。
病だから……仕方無い?
だからって…そんな目で
僕の"左目"を見ないで……見るなよ…!!
なんで……大切な物まで奪う
どうして…
どうして、何もちゃんと見てくれない…。
なんで人間は…何時もっ!!。
* * *
「…っ……ぁ…ッ」
「!……聖?」
伊達軍は聖の事あって取り敢えずは
躑躅ヶ崎館に居座らせてもらい…もう
闇が深い夜だ……兵達は皆、寝静まった。
「…は…っ……ぅぁ…ぁ…ッ」
「聖っ…しっかりしろ…!」
俺は聖が心配で寝ていられる筈なく
隣には勿論、小十郎も居て、ずっと看ていた
「…傷がまた、熱を蝕んでますね…」
「……聖っ」
だが…そんな時、今まで、何とか落ち着いて
眠っていた筈の聖が突然、魘されるよう苦しみだす…
小十郎の言葉に、俺は聖の腕に手を添えてみた
確かに…熱い、身体全体的にも…蝕まれてる。
――シュタッ
「……独眼竜、解熱剤だ、俺の里に伝わる秘薬だ…今の聖ちゃんは
前にも高熱を出していたと聞いていたから、元々身体が弱っていた筈
…また悪化しかけているのかも知れないし
……普通の医者が出す薬よりは俄然、良く効く代物だぜ」
「猿飛……」
「…政宗様……今は信じましょう…
この侭、ただ見ている訳には参りますまい」
何処からともなく現れた真田の忍…こいつが聖を拐かしたんだ
信じられる訳がない…。
それが事実、本音だ…だが今は藁にも縋る思い…
これ以上、聖を苦しませたくない、辛い姿を見たくない
小十郎も言うのだから、信じるしかない…。
。