〜尊いし眸〜
□六章
1ページ/6ページ
――ドドドドッ…ザッ!ブルルッ!!――
[あ〜ぁ、こりゃ…一発戦でも起こしそうなご様子だねぇ…]
[…政宗様の馬さんまで、すごい怒っちゃってる…]
[へ?……、なんて言ってんの…?]
[出て来やがれ、門番蹴り倒すぞ!……って]
[……、ははっ…流石は独眼竜の愛馬さん、気性が荒いねぇ]
[佐助さん…?]
[一応…ウチのお館様は穏便に済ませたいと言ってたけど
…好戦的な伊達相手には、ちと難しいかも知れねぇ…
もしも旦那達がやむを得ず暴れそうだったら
俺様は大将達も止めなきゃなんねぇ…聖ちゃんも
竜の旦那達を止めるの…頼まれてくれる?
君なら、きっと…荒ぶる独眼竜を、止めれる筈だから]
[ぁ…うん…それは勿論、頑張ってみる……]
[ありがと、聖ちゃんが居てくれたら心強い
…でも今はまだ隠れてて…無理してもらうのは悪いし
俺様達で済めば一番良い結果だからね…]
* * *
佐助さんとこれから起きる事を予想し
僕に伝える事を伝えて、疾駆の如くに
幸村さんの元に戻って行った頃
躑躅ヶ崎館の門前では騒ぎが大きくなった…。
「♪〜……大将自らお出迎えたァ、随分な持て成しだな」
「…独眼竜殿…」
「…お主らが此処に来た理由は分かっておる、彼の独眼竜が
ここまで焦る程にあの小さき鳥はそれ程までに大事なのであろう?」
「!……Ha!…bingo、か…アンタらが何をしたか分かってんなら
話しは早いぜ―――My little bird……今すぐ聖を返しな」
佐助さんから、此処の木々は門からは
死角だと言っていたが、どうやら本当のようだ…
だが…迎えた信玄様や幸村さん達に対して
政宗様は何だか様子がおかしい
小十郎さんも何時もより慎重な様子な上
何よりも伊達軍の皆は何だか自らの主を
何とも言えず"怯えながら"政宗様を見ていたから。
「お…落ち着かれよ独眼竜!此度の一件は我らが民草
巨大鳥を奥州に落ちるのを見た者が多数居られた
それに伴い、独眼竜が飼っているのではないかと噂し
毎日を恐れに抱く民を思いお館様は仕方なく強制を取らせて頂いたのだ!」
「……Ah?…"仕方なく"…だと…?」
(………政宗様…何でそんなに…怒って……)
幸村さんの言葉は全てが真実、戦国の世
領主なれば民草を思うも勤めで…僕も自分の性格上
気にするタイプでもなく幸村さんも佐助さんも信玄様も皆
優しかった、温かかったから逆に会えて良かったとも思っていた
だけど…今の彼…政宗様は…何だか怖い…。
心荒ぶる竜の如くに…荒竜のよう。
。