〜尊いし眸〜

□六章
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『……、聖…真面目な話…さっきみたいに
少しづつでも良いから……また笑いなよ?輝いてた』
『ぇ…』

『そうよ…折角の男前が…ぁ…いや、可愛さが
冷めたクールで勿体無い!
今すぐにとは言わない…だけど近い内…私達と一緒に
外へ遊びに行こう?聖の好きな動物が沢山居る場所、動物園とかね?』


『っ……ぅ…う…ん…』




 思えば…あの世界で唯一…人間で
深い親友と呼べる優しい人達だった……。



ギキイィィ!!…ドォンッッ!




『?!…事故?。…………っ!?』


 僕の家から出て二人が帰る時…姿が見えなくなるまで
見送ろうと思った刹那だった…僕の目の前で

 大きなトラックが突っ込んだ







―――ダッタッタッタッタ……ザッ…
『…二人…とも……また…って……』


 また……不慮の事故だった



 事故だった筈だ……一瞬にしての…事故



 今日、初めて大切な親友と思える者達が

 また…人間に奪われてしまった…。






 辺りに血の海が広がっていた……
応急処置も何も出来ない……悉く…即死。






『……も…ぅ……人間……なん、て………ッ!!』






―――本当に大切な者は…気づかされてから





――……聖――


失うんだと、知った…――



――…聖っ――


―――だから……もう








『………も…う……要ら…ない 全部……

生も…何も……何もかも…要らない


………要ら…ない……から……』



今をまだ生きてる僕を………殺して……全て…。








* * *

「…流石は独眼竜が爪…こんな、細っこい身体で竜の旦那の攻撃を
受け止めただけでも関心ものだけど…腕から全体に駆けて
結構な重傷…身体の内傷……次に起きて動かせるかどうか分からない…」

「…はぁ……ッ…ぅ……」


 此処は躑躅ヶ崎館が客間、あれから倒れてしまった聖は急いで
武田軍医に治療してもらい、命は取り留めたが
傷が深く次に動かせる身体になるかは分からないと

 あれからもう夜更けとなっていて、政宗と小十郎は
聖に付きっきり、佐助は聖の容態を坦々と説明していた。


「……、猿飛…真田は…」

「嗚呼、旦那は大丈夫!あの人は頑丈さだけが取り得だからね
…でも、今一番、心配なのは聖ちゃんと独眼竜の旦那じゃないの?」

「……、そりゃな」


 静寂な時の中、小十郎の冷静な声に佐助も答え
雰囲気を和ませようと心掛けてはいるが…何分、難


「…………、聖…っ…すまなかった……俺は…お前を傷付ける事しか
出来なかった…こんなにも…お前は…お前まで俺をッ!!」

「…………、政宗様…差し出がましいですが貴方様は
間違ってはおりませぬ……聖は政宗様を必死で止めたかっただけです
…この小さな鳥…貴方様にとっては最早、伊達軍が同等
それ以上…"双竜が宝"…政宗様の想いはこの小十郎も同じ想いです…」

「……小十郎……」


「迷える小鳥は竜の元に戻ってきたのです
…必死に帰ろうとしていた、だから信じましょう…聖を」


 何時もに増して、らしくなかった独眼竜…
だが、信頼すべき竜の右目が、再び竜の瞳に光を僅かに照らした…。





 そうだな、信じよう…お前を…






 俺はお前を大切に飼うと……





 大切にすると…竜が、双竜が誓ったんだ……。






 My little bird……





 だから早く、目覚めてくれ…―――。






to be continue……
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