〜尊いし眸〜

□伍章
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「ッ…くっ……聖…っ、Shit!情報がねぇんだ!もう一度詳しく説明しろ!」

「す、すみません…筆頭…俺が着いていながら目の前で…聖が…」
「申し訳ありやせんっ!俺も油断してました…まさか忍が聖を…っ」


 聖が何処ぞの忍に攫われたと、俺の元に青冷めた血相で
成実達が報告しに来て早一日が経ってしまった
俺は柄にもなく不安になり、自身の判断を恨んだ

 聖が来てからこの城は人払い済みだが…忍まで
……迂闊だった、優れた奴らなら人の目も掻い潜れた…
そんなこと分かりきって…なのに俺が見えてなかった


「っ、俺が聞きてぇのは謝罪の言葉じゃ…!!」
「政宗様、落ち着きなさいませ。聖の身が心配なのは
分かりますが、貴方様が気を乱しては伊達軍の気も乱れますぞ…」

「!?……小十、郎…」


 小十郎の言葉にハッとして周りを見た…


『…………』


 俺だけじゃねぇ……目の前で聖が攫われてしまった
何も出来なかったコイツらは、俺以上に悔やんでるんだ

 また、前が見えてなかったか…。


「気持ちは皆…一緒です…」

「……sorry…悪かった、小十郎、オメェらも
…筆頭である俺がcoolにならねぇと意味が無かったな…」


 小十郎達も聖の事を大切に思い始めてる
そうだ……伊達軍が…皆が初めて、護りたいと思えられる宝なんだ。






"……僕……死んで…なかったんですね…"







 あんなにも、生に絶望して弱っていた。
Big birdの化身ではなく左の眸が珍しい人間…否…little bird


 医者にも誰にも言わないで一人、高熱に伏せ
誰も居ない己の家で静かに死を待っていた…だ…
birdってのはとことん死に様を見せたがらない生き物だな。


「成実…宗時…それに忍を見た者…ゆっくりで良い
時間はある…だが俺らには情報が無いんだ……思い出してくれ」


 聖の話を聞いて俺は多分、この右目を失った時のように
アイツを俺と重ねていたのかも知れない
拾い…飼うなどとう言葉は建て前だ…。

 本当はただ、護りたいと思った…幼き頃の
俺には常に小十郎が居た、絶望から拾い上げてくれた


 だが、聖には本当に、"何も無かった"


 人間に友と言うものすら奪われた…。


「…当然ですぜ…っ」
「……特徴……特徴…っ」


「焦るんじゃねえ…」


 悲しいじゃねぇか、そんなの…何も無いなんて




……独りでも………大丈夫です…





 そんなの…




 そんな風に考えるなら…




 命を捨てるくらいなら…






 いっその事…この独眼竜とその右目が



 その儚い命、大切に飼ってやるさ……




 だが、そうなると…竜から逃げる事は…二度と叶わねぇな



 竜は執着心が強い……飛べないように…



 独眼竜がその左眼すら、綺麗な翼諸共…喰い千切ってやろうか…。




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