〜尊いし眸〜

□伍章
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 躑躅ヶ崎館の屋根の上まで爆風の如くに砂埃と爆音が響いた。


「まだあのお二方はやってるし……。ってかそろそろ
日が沈む頃か…流石に聖ちゃんを二日借りるのは不味いと思うけどなぁ…」
「……!?、ぇ…二日って…」


 夕焼けが顔を覗かせた頃、佐助さんの言葉に冷や汗が流れた
彼に攫われてから僕は確かに寝ていたが半時間程かと思っていた。


「……ぁ、そっか…君に吸わせた薬は催瞑薬って言うんだけど
効き過ぎてたから結局、寝てたんだったよなぁ…
ぁ〜…此処で一日と半分お泊まりしちゃった事になってる…」
「政宗様達は…この事を…?」

「あっはは〜…俺様が伊達軍に忍び込んで、華麗に
かっ攫っちゃったから当然知らないね、今頃…大騒ぎだ…きっと」


 城下を見下ろしながらも直ぐに僕に
視線を戻した佐助さんの顔もちょっとばかり歪んで
『俺様、竜の旦那達に喰い殺されるかも〜…』と、酷く怯えていた。


「……僕も政宗様と小十郎さんの怖面を考えたら気絶しそう」


 そう言ったら佐助さんはハッとしながらよしよし
と頭を撫でてくれた…なんだか扱い方がお母さん…。


――ダッタッタッタ!!―
「お館様ー!!幸村様ー!!北方より
伊達の御旗と思われる騎馬隊がこの武田領地に向かっております!」
「なんと?!…お館様!!どうなさいますか!」

「……奥州の独眼竜か…迎えじゃろうて、迎撃は絶対にするでないぞ!迎え入れるのだ!」

「え?…りょ、了解致しました!!」
「佐助!佐助は居らぬのか!」




―――…何だか城が突然慌ただしくなり
信玄様と幸村様が佐助さんを呼ぶ声が響いた。


「北〜…ぁー…本当だ…あれは間違いなく竜の旦那達だね…」
「佐助さん、目が良いですね…僕には…
蒼い何かが走ってるくらいしか見えないです」
「それだけでも認識出来れば…上々ってねっ!」

「!!?」


 城の北の方角には確かに此方に向かって来る…色
蒼の集団だろう目を凝らしていたら再びの浮遊間が身を襲う


「降りるから、またしっかり掴まっててね〜」
――…ヒュゥゥゥ
「?!…ふ…浮、遊…」


 しかし景色は空に戻り、佐助さんはまた軽々と
颯爽に僕を抱き上げてこの高い躑躅ヶ崎館から"飛び降りた"


――スタッ
「猿飛佐助、此処に」
「おお!佐助、探したぞ今まで何処に…?……聖殿
如何なされた?顔が真っ青でござるぞ」

「ははっ、聖ちゃんも繊細だねぇ〜」
「……ぅぅ、…はぁ……」



 スカイダイビングをちょっぴりした気分
…他人事な佐助さんが少し恨めしい……。




 この先、僕の身は持つのだろうか…精神的に…―――。






to be continue……
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