薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□六
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 衷心――そんな事、言われても俺には分からない…

今の一の気持ちが……俺にとっては
申し訳ない気持ちしか駆り立て兼ねない。


「……俺はもう平気です、だから一…今度は貴方が呑みなさい…俺の血を……今の貴方の身体では血を補うにも時間が掛かりましょう……」


 ただ、今の俺に出来る事は、彼の身体を労り
…己の身に流れる血を呑んでもらうこと…
血を多く貰ったのだから
起き上がれても倒れられては困る


「……、わかった…」

「!…今日は随分と素直で……ぁ…聞いておきながら申し訳無いのですが…口からか、手からか…どちらが呑みやすいか…」
「なっ……そ…そんな事を…わざわざ聞く…な…っ!?」

「!……無理をして起きてはいけませんよ…」
「…っ……」


 一がこんな状態なので真面目に聞いたつもりだったのだが
彼にとってはからかわれた…としか受け取れなかったか

貧血状態の体で無理に上半身を起こしたが
直ぐに壁に背が付いてしまった


「……そんな状態だから」

「……はぁ……、手で…良い…縁が舌を咬んで…
血を流してまで欲しくは無い…」

「……、すみません…気を遣わせましたね…」

「いや……」

 少し驚いたが一は俺の身を案じてくれていたのか
自分の身も辛いだろうに無理をしてくれる…

―スッ…
「……さ、一…」

「…ん…」


 なるべく負担が掛からないように、一の背を支えながら
呑みやすいよう掌の横を切って口元へ添えた

彼は躊躇なく血を呑んでくれて安堵したが
…常人ならば嫌気が差すだろう


 俺の身に流れる血は血に非ず…

忌むべきものでも、人にとっては薬ならば複雑な気持ち。



「余り気分的には良いものではないから…大丈夫ですか?…」
「……、嗚呼、平気だ…血に対しては慣れてる…」

「…そうですか……」


 多分、多くの人を斬ってきたからの慣れ…

少し複雑そうな一…聞いたのは間違いか…行いが間違いなのか



「………もう…平気だ…」
「ぁ…、はい……」

 俺の腕を掴んでソッと口から離す一に頷いた……が


「……………」

「……あの…一?」


 そのまま何故か腕を掴んだ侭、離してくれない


 暗く、真剣な面差しをしていて。



「……縁…お前は…」

「?……」


「………いや…やはり…何でもない…」


 また、一らしくなく…歯切れ悪く口を閉じる…
無言の侭、俺が切った掌に手拭いを巻いてくれた

 無理に聞くのは悪いから深くは干渉はしないが…
彼がこれからの事を案じてくれていたとは知らず



 …深入り出来ず……。

只、今は…戦の時まで無情に時間だけが




「…一……」

「…………、…苦しくなったら…隠さずに…ちゃんと…言え……」


「!!………す、みませ…ん」



ーー…過ぎ去った………。











to be continue…
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