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□久々のデート
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金曜日。
綾は湘南のとある駅に来ていた。
彼からデートのお誘いを受け、放課後すぐに飛んできたのだ。
携帯電話を開いて時刻を確認すると、午後4時となっていた。
( ふぅ…紳ちゃん、まだかな…… )
ホーム近くの花壇の前で待つ。
白、赤、青、黄色、ピンク‥
そこにはマリーゴールドやフリージア、ツツジなど色とりどりの春の花々が植わられていた。
(キレイ……)
見とれていると、愛しの彼の声がした。
「 綾、 」
「あ…紳ちゃん!」
「待たせてしまったみたいで悪いな。」
「ううん、大丈夫だよ!」
「そうか、じゃあ行こう。」
二人は横並びで歩き出した。
牧はさり気なく車道側に寄り、彼女の歩幅に合わせている。
そんな些細な気遣いをスマートにこなすものだから、綾の心臓はバクバクと音を立てている。
( 紳ちゃん… )
(ブレザー姿もカッコイイなぁ…)
そう、海南の制服はブレザーなのだ。
綾の通う湘北では
男子は学ランのため見慣れておらず、とても新鮮だった。
牧は隣を歩く綾の手をつなぎ、ギュッと力を込めた。
「…!」
" ずっと離れたくない "
そんな想いが込められている様だった。
( し、紳ちゃん…… )
( 顔が真っ赤だぞ…
フッ、相変わらず可愛い奴。)
美男美女の二人。
度々、街行く人々が振り返る。
綾は、牧が有名人であり
高身長かつ男の色気が漂っているからだと予想した。
自身も魅了している事には気が付かず‥
ー そして、10分ほど歩いた所でお洒落な造りのカフェに入った。
「うわ〜、素敵なお店!初めて来たよ!
紳ちゃんは何頼む?」
「そうだな、俺は…アイスコーヒーで。」
「コーヒーだけでいいの?
じゃあ私は、ロイヤルミルクティーと苺のパフェ!」
「お待たせ致しました。ごゆっくりどうぞ。」
しばらくすると注文した品がやって来た。
ひんやり冷たい珈琲と、店のロゴがプリントされたオシャレなカップに注がれたミルクティー。
旬の苺とソフトクリームには苺ソースがたっぷりとかけてある。甘いもの好きには堪らないスイーツだ。
「美味しそう〜!
ねぇ、紳ちゃんも一緒に食べようよ!」
「ああ。いただくとするか。」
それからと言うもの
綾は部活や勉強、友達、学校生活の事など‥様々な話をした。
強豪校の練習は厳しく多忙なため、二人は頻繁に会う事は許されない‥‥
こうして実際に顔を合わせると
嬉しい反面、重い現実を突きつけられてしまう‥‥切ない恋愛事情なのである。
相槌を打ちながら愛おしそうな眼差しで彼女を見つめている牧。
ただ単に、綾が楽しそうにしている。
その姿を見ているだけで
日頃の疲れも吹っ飛んでしまうのだった。