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□ナイチンゲール
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ひとり屋上へとやってきた綾。

と、その時‥!

おそらく殴り合っているのであろう、
パンチの衝撃音や罵声が鳴り響いていた‥‥!!


「!?」


居ても立ってもいられなくなった綾は、入り口へと急いだ。


ー すると‥!


「さ、桜木くんに水戸くんに…流川くん!?」


「「 !! 」」


「ぬ…!?綾さん!」


「…春野さん。」


「…? あ、アイツは……」


とんでもない現場を目撃してしまった綾。

顔面が血まみれになった流川に加え、桜木や水戸、晴子と言う可愛いらしい女生徒と‥‥まるでギャラリーの様にこの光景を楽しんでいる(?)男子達が居た。


「流川くん!?…す、すごい出血…!
早く保健室に行って手当てしないと!」


「…別にいい。こんなの、ほっときゃ治る。」


「なっ…!ダメだよっ!
ほら、いいから保健室に行くよっ!」


「!」


綾は流川の手を取って半強制的に保健室へと連れて行った。
状況がよく掴めなかったが、ケガ人を黙って見過ごすワケにはいかない。
まるで自身の本能が働いたかの様に勝手に体が動いていた。


「先生!いらっしゃいませんか!?

…居ないのかぁ…仕方ない。」


担当者は生憎、席を外している様だ。
保健室には誰も居ない。

綾は流川をベッドに座らせ、救急箱を手に取りテキパキと応急手当を開始した。
止血や消毒をした後、頭部には包帯をぐるぐると器用に巻いてあげた。


「ふぅ、これで良し…!

流川くん…本当に大丈夫?
とりあえず血は止まったけど、あとで絶対に病院で診てもらってね。」


「…どーも。

…お前、確か同じクラスの……」


「うん、春野だよ。覚えててくれたんだ?
流川くんって授業中いつも寝てばっかりだからバスケ部に入部したって聞いて、びっくりしちゃった!

…って、ケガしてるのに急に色々話されても困るよね。ごめんね……」


「…楓。」


「えっ?」


「入学式の時…素敵な名前だって…
嬉しかった。

だから、これからはそう呼べ。」


「え…命令なの?」


「命令だ。」


「ぷっ…ふふっ、流川くんって、あ…

楓くん…って面白い人だね!」


「!?」


流川の言葉に思わず吹き出してしまった綾。
突然笑われた彼は、ムッと眉をしかめていた。

「ごめんね。呼び捨てはさすがに無理だから、" 楓くん " でも良いかな…?」


「…うす。」


「ありがとう!
でもね、楓って本当に素敵な名前だと思うよ。風流だし、何か日本人の奥ゆかしさみたいなのを感じさせると言うか…
好きだなぁって思ったの。」


「…!!」


「? 顔が赤いよ?
打ち所が悪くて発熱してるのかも…?

ごめんね、楓くんって話しやすいからつい長くなっちゃって…
それじゃ、私はこれで。
早めにお医者さんに診てもらってね。」


じゃあね、と手を振って
保健室から出て行く綾。

その姿を流川はずっと見つめていた。


(…お前のせいだ、どあほぅ……)
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