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□束の間の時間。
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「 綾、元気だったか?」


「うん、元気だよ!
紳ちゃんも元気そうで良かった!」


立ち尽くしたまま、見つめ合う二人‥‥


「インターハイ予選に向けて、皆凄く気合いが入ってるね。
さすが王者・海南!キャプテンから見て今年度の部員達はいかがですか?」


綾は30cmほど身長差がある彼の目を見ながら腕を伸ばし、まるでインタビューをする記者の様な口調で話した。

「ああ…
常勝の幕を下ろす訳にはいかないぜ。

特に神は努力家でキレのあるロングシューターだ。清田はお調子者だが、なかなかに根性がある。ここぞと言う場面で活躍できる選手だと思っている。」


「そうなんだ!
さすが紳ちゃん、視野が広いね。
ちゃんと一人一人の長所や短所を分かってる。
私も、ちょこっとだけバスケしたくなっちゃったなぁ…
レイアップだけだから、良いかな…?」


「今は休憩時間だから別に構わんが…
制服だしな……その、気をつけてな。

よし。俺が補助にまわってやる。」


言葉を濁わせ、少し顔を赤くする牧。

スカートの中身を‥‥
彼が何を言わんとしているのか、すぐに察した綾だった。


「! あっ、そうだった…
恥ずかしいから…絶対に見ないでね?」


( …当たり前だ。)


綾は軽くドリブルをして
ディフェンスの姿勢を取っている牧を素早く抜き、バスケの基本中の基本であるレイアップシュートを決めた。


「やった〜!入ったぁ!
紳ちゃん、見ててくれた?」


「ああ。もちろんだ。
ナイッシュ、綾。」


彼等はパチン!と、ハイタッチをした。


「やっぱりバスケって楽しいね!大好き!」


「フッ…そうだな。

俺も好きだ。お前の喜んでいる顔を見るのもな……」


「えっ…」


彼のストレートな発言に、顔が真っ赤になってしまった。


ー そして、しばらくして‥‥


「今日は紳ちゃんに会えてすっごく嬉しかったよ。どうもありがとう!

あと…貴重な休み時間を台無しにしちゃってごめんなさい。私…そろそろ帰るね。午後の練習も、頑張って…!」


「そんな事はない。気にするな。
それより、送って行かなくて大丈夫か?あとでまた連絡するからな…」


綾の頭を優しく撫でる牧。
その表情はとても穏やかで、
神奈川No. 1プレイヤーでも主将としてでも無く‥‥普段、部員達には決して見せない男の顔をしていた。


「うん…平気だよ。
じゃあまたね、紳ちゃん。

皆さんもお邪魔しました。失礼します!」


「あぁ、気をつけてな。」


「あ…春野さん!
差し入れ、ご馳走様でした!」


清田に手を振り、周囲にペコペコとお辞儀をした綾は颯爽と体育館を後にした。


「…さぁ、午後からの練習も厳しいぞ!
各自ポジションに就くんだ!」


「「 おうっ!!」」


( 綾…俺も嬉しかったぜ。

後輩達には気をつけないといかんな。
まったく…
モテる彼女を持つと大変だな…… )
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