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□犬になってみた。
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前に猫になったらなんだか貴久に負けた気がしたから今日は犬になってみようと思う。
今度は私が勝つぞ!
そう意気込んでソファーに座ってテレビを見ていた貴久の前に立つ。
「?」
テレビ見えないよ、と言う貴久を無視してそのまま前に進み、彼の膝の上に座ってみる。
いきなり何だ、という顔をして貴久がこちらを見た。
「わん!」
構って、そういう意味で一声鳴けば彼はピンときたようで、すぐに笑いかけてくれた。
「遊びたいの?」
そう言われて貴久の肩に顔を埋めればよしよしと頭を撫でられた。
ちょっと恥ずかしいけど、犬ってこんな感じだよね…?たぶん。…うん、恥ずかしい。
「耳赤いね」
指摘されて更に恥ずかしくなる。
「だ、だって恥ずかしいんだよ!?けど、私は負けないから!」
そう宣言すれば彼は俺だって負けないよ、と笑った。
負けない、と言ったもののどうすれば勝てるのか分からない。とりあえず犬になったのでそれっぽいことを思い出してみる。
犬ってなにするっけ?顔を舐める?いやいやそれはさすがに出来ない…。後は、匂いを嗅ぐ。
試しに貴久の首筋をくんっと嗅いでみた。
瞬間、貴久の匂いが鼻をくすぐりたまらない気持ちになる。
これは、だめだ…!とてもダメなやつだった…!ぶわあぁと体温が上がり一気に顔が熱くなる。
恥ずかしさに貴久の膝から退くと、彼が不思議そうに首を傾げた。
「なに?何でそんなに真っ赤なの?」
「なんでもない」
「ふーん?ナマエ、」
おいで、両手を広げてそう言う彼はなんだか楽しそうだった。
渋々側へ行くとさっきまで居た膝の上に座らされる。
「で、何で顔赤いの?」
「……犬って、どんなことするのかなって、思い出してみて…」
「うん」
「貴久の…、匂いを、嗅いで……」
全部言う前に恥ずかしさMAXになった私は両手で顔を覆った。
改めて言葉にすると恥ずかしさがすごい…!どんなプレイなの!?
しばらく経っても貴久からの返答が何もないので指の間からそっと盗み見ると、見えたのは顔を赤くして片手で顔を覆っている貴久の姿だった。
「え、」
意外な反応につい声が出る。
「それさあ…、ズルくない…?」
「そ、そう…?」
わん、そう鳴いてみれば頬の赤い貴久が微笑みながら力なく私を撫でる。
今日は負けた、貴久が笑ってそう言った。
なんと、勝ってしまった。
私的には負けた気がしたのに何故か貴久の方が負けを認めた。
これで一勝一敗。一勝一敗、その響きがなんだか可笑しい。
「ふふ」
「?」
「何の勝負なんだろうね、これ」
「ナマエが言ったんでしょ…ふふ」
なんだか可笑しくなり、それから2人でしばらく笑っていた。
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