本棚

□恋していいですか?3
1ページ/1ページ


朝起きるとまず思い出したのが、増田先輩の笑顔だった。昨日からちょくちょく思い出してしまっている。先輩の笑顔には特別な力があるのかもしれない。
なんてことを考えながら歩いていると人にぶつかってしまった。
「っ、ごめんなさい…!」
私のばかたれ!前見て歩いてないからだよぉ!
ごめんなさいすいません、とすごい勢いで謝る。
ぶつかった人を恐る恐る見てみるとなんと、加藤先輩だった。
「っ!!」
なんて人にぶつかってんだ私!学校のアイドルに怪我させるとこだったぞ私!!!
「ほんとうにすいませんっ!」
「気にしてないって。俺も前にぶつかっちゃったし…ていうかちょっと待ってて」
「?」
「おーい!まっすー!こっち来てー!」
前を歩く男の人に声を掛ける加藤先輩。
え、あれ増田先輩?!あ、走ってくる。ちょっと緊張する。心の準備が出来てないのに。
「おはよーナマエちゃん」
爽やかでキラキラな笑顔。
増田先輩の笑顔に朝から癒される。けれどほんの少し顔をあわせるのが気恥しい。会えて嬉しいんだけど、何でだろう。
「おはよう、ございます…」
尻すぼみになった私の挨拶にもニコニコと笑みを浮かべて頷いてくれる先輩。優しいなぁ。
「この時間に登校なんだ?」
「そうですね、だいたいこの時間です」
「俺らもうちょい遅いよな」
「シゲの準備が遅いからだよね?俺はもう少し早くてもいいのにさ」
「いーじゃんいーじゃん!今日は早く登校出来たんだしさ!あ、そうだ、キミも一緒に学校行く?」
驚いた。加藤先輩何をおっしゃっているんですか?!そりゃ、増田先輩と登校出来たら楽しいだろうなとか思うけど…けどそんなことしたらファンの子たちに何言われるか…!
「え、いやあのっ…ご、ごめんなさい抜け駆けみたいなこと出来ないです!!」
そう叫んで学校へダッシュする。
「…せっかく人見知りが頑張ったのに。逃げられたよまっすー」
「ふふふ、かわいいよね」
なんて会話を先輩たちがしていたなんて私は知るわけもなかった。

校内に入るとダッシュしたせいかじんわりと汗が滲んできた。
疲れて重たい足取りで教室へと入る。
朝から疲れた…。増田先輩と登校か…惜しいことしたかな。いやでもあの場には加藤先輩も居たしそうなったらはるちゃんに悪いもん。
「よっ!ナマエおはよー」
「わっ!?」
「なに?どうしてびっくりしたの?」
「いや…何でも…」
びっくりした…噂をすれば、だなぁ。
「あ!」
「な、なに!?」
「加藤先輩だ…」
窓の外をみると加藤先輩と増田先輩が歩いていた。
どうやら今学校に着いたみたいだ。
「加藤先輩、今日もかっこいいなあ」
「私、応援してるからね!はるちゃん!」
「ナマエ!ありがとう嬉しい!」
なんてやり取りをしていると増田先輩がこちらに気づいて軽く手を振ってくれた。
その姿になんだか胸がキュッとなって手を振り返すことが出来なかった。
「ねー、増田先輩さ、ナマエに手振ってない?」
「そう、かな…」
「そうだって、あっ、加藤先輩も気づいた!手振ってくれてる!」
ニコニコと笑って加藤先輩に手を振り返すはるちゃん。その姿を見習ってちょっと恥ずかしいけど私も増田先輩に手を振り返した。控えめにだけど。
すると、先程よりも激しく手を振ってくれる増田先輩。なんだか可愛くてついつい笑みがこぼれてしまう。
「あはは!増田先輩なにあれかわい〜!」
「うん、かわいい」
「おっと…!?」
横から視線を感じて見れば、はるちゃんが私をじっと見ていた。
「ん?」
見つめ返すとはるちゃんはなんでもなーい、と笑って視線を窓の外へと戻した。
「あ、2人とも行っちゃう…残念」
寂しそうにするはるちゃんに何だか私まで同じ気持ちになる。
学年が違う恋って難しいよね。同じ部活に入ってるわけでもないし。加藤先輩は部活入ってないけど、はるちゃんはテニス部だもん。
さっきみたいにちょっとでも会えるのがすごく嬉しかったりするんだろうな。
「はるちゃん、色々相談のるからね!頑張ろうね!」
「ん〜、ありがとう。だけどナマエの相談も受け付けてるからねー?」
「ん?ありがとう」
分かってないかぁ、そう言ってはるちゃんは自分の席へと戻っていった。
分かってないって?なんの話しだろ。

その日の昼休み、はるちゃんの恋バナを聞くことになった。
というのも、私が気になって聞いたから。
「気づいたのは…1週間前くらいだよ?」
「最近じゃん!…で、どうやって気づいたの…?」
「最初は憧れだったんだけど、ほら、移動教室の時とかに出会ったりするとすごくドキドキして嬉しくて、そしたらなんか、毎日、何をしてても加藤先輩のことを思い出してる自分に気づいたんだよね…」
少し恥ずかしそうにそう言うはるちゃん。
何をしてても思い出す、身に覚えがあった。
「…それって、朝起きてからとかも思い出したり…?」
「朝?そうだね、思い出しちゃうかも。寝る前だって、目閉じてもその人の笑顔とかが浮かんできちゃったりさ」
私、昨日の夜……思い出した…確かに増田先輩の笑顔を思い出した。
思い返してみれば先輩に会うとドキドキもするし。
え、あれ?私……そっか。そういうことか。
今まで不思議だった疑問がすとん、と心に落ちた。納得だ。私って増田先輩の事好きなんだな。
「けどやっぱさ、あんなに人気な人なんだもん。頑張りたいって思うけど…私なんかがって思っちゃうよね」
加藤先輩は人気だ。けれど増田先輩もそれは同じで。私なんか、か。
だけど私は諦めたくないよ、はるちゃん。
気づいたばかりの私だけど、はるちゃんと同じ気持ちなんだって、一緒に頑張りたいって思った。
「そんな事ないよ!」
「ナマエ?」
「一緒に頑張ろう!」
はるちゃんの手を取ってぎゅっと握る。
この恋、私ははるちゃんと頑張りたいよ。
「一緒に…ってナマエもしかして」
「…うん、私ね、増田先輩のことが好きみたい」
意を決してそう言うとはるちゃんはやっぱりね、と笑った。
「やっぱり?」
「なんか最近増田先輩と絡むこと増えたじゃん?ナマエの表情が前、遠くから見てた時と違う気がしてたから」
前見てた時と違う表情、自分でも気づいていなかったことを指摘されてなんだか恥ずかしくなる。
「けど、そうだよね。諦めきれないもん。ナマエ、頑張ろうね」
「うん!」
はるちゃんの笑顔が見れてほっとする。
難しい恋だけど、2人で頑張って、いつかは。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ