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□猫になってみた。
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「にゃあ」
目の前の貴久に猫の鳴き真似をしてみた。
「……?」
目を丸くして頭にハテナを浮かべながらこちらを見る貴久。
「にゃあ」
もう一度鳴いてみる。
「ふふ、なに?」
可笑しそうに笑いながら私との距離を詰めて来たので詰められた分だけ離れてみた。
「……」
貴久はムッとして無言で空いた分の距離を詰める。
かわいい。
イタズラしたくなって私はまた離れた。詰められては離れてをしばらく繰り返す。
するとソファの端まで追い詰められてしまった。
「にゃ〜」
「なに?分かんないよ」
貴久がするっと私の手に自分の手を重ねてそのまま捕まえられた。
貴久の困惑する顔も悪くないな、なんて思っていると頭を優しく撫でられる。
そのまま頬を通り顎を撫でる貴久の手。
ちょっと恥ずかしくなってやめて、と言えば彼は微笑みながらやだ、と言った。
やだ、だって。かわいい。
「猫ってこうすると気持ちがるんじゃなかったかな〜?違った?」
悪戯っぽく笑う貴久の手は未だに私の顎をするすると撫でている。
「……」
やられた。これはどうするのが正解なんだろう。分からない。
分からないなりに私は目を閉じて気持ちいいですよ、と鳴いてみる。
「にゃ…」
にゃあ、そう鳴き終わる前に唇に軽く何かが触れた。
驚いて目を開けると、そこにはニコニコの貴久が居た。
「かわいい」
愛おしそうにそう言われてしまえば、猫の様な澄まし顔をしているなんて無理である。
「……負けました」
「いえーい、勝った」
何の勝負もしてなかったのに負けた、そう思ってついつい負けました、の一言が出てしまった。
何だか悔しい。次は犬になってみようかな。
貴久に負けたって言わせてみせる。
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