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□恋していいですか?2
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増田先輩にハンカチを貸してもらった次の日。
綺麗に洗濯した増田先輩のハンカチをこれまた綺麗に丁寧に畳んで制服のポッケへとしまい、登校した。
移動教室の時に加藤先輩大好きなはるちゃんに習って注意深くきょろきょろと周りを見渡す。
「加藤先輩!」
「え」
はるちゃんが声を上げた方を見ると体操服を着た増田先輩と加藤先輩が歩いていた。
増田先輩…どうしよう、ハンカチ。返さなきゃ…こっちに気づいて…先輩…ハンカチ〜!
そう強く念じているとそれに気づいたのかは分からないけど2人がこちらを向いた。
「!」
増田先輩は私の方を見て軽く笑みを浮かべる。
「あ…」
身体中がかあっと熱くなる。よく分からない気持ちが溢れそうでチャンスなのに声が出なかった。
「ねえ、今増田先輩こっちみて笑わなかった?!」
「キャー!シゲ先輩!まっすー先輩!!」
私とはるちゃんの周りにいた女の子たちが黄色い声を上げた。その声でハッと我に返る。
ハンカチ、返しそびれてしまった。
「ナマエ、さっきさぁ…増田先輩アンタに笑いかけなかった?」
「ぅえ!?」
予想外だ。はるちゃんは加藤先輩しか見てないと思っていたのに…。
「……後で詳しく教えてね」
「はい…」
恐るべし親友。


昼休み、根掘り葉掘り聞かれた私ははるちゃんからすごい勢いでお願いされている。
「絶対だよ!私のいる時に増田先輩にハンカチ返してね!加藤先輩の近くにちょっとでも居たいもん!」
「うん、分かった。分かったからそんなに揺さぶらないで〜…!」
加藤先輩が近くにいる時返すよ、そう言えば彼女は私を揺さぶっていた両腕をピタリと止めた。
助かった。ご飯の後だったから危なかった。
「今さ、先輩たち校庭でサッカーしてるじゃん」
「うん」
「帰り待ってハンカチ渡したら?」
その考えは私もした。だけどやっぱり先輩の同級生の女の子たちや後輩の女の子たちがいっぱい居る。危険地帯だ。
「昼休みの後はそうじでしょ?みんな掃除しに行くんだから大丈夫だって」
「ん〜そうだといいけど」
「それじゃ行くよ〜」
はるちゃんは強引に私の腕を取ると玄関へと歩き出してしまった。
大丈夫かな。心配だな…。

昼休みも終わり、緊張の時が来た。
けれど意外にも先輩たちが戻ってくるのを待っている間に外でサッカーを見ていた女子たちはさっさと校内へ入っていってしまった。
どうやら日焼けをしたくないらしい。なんとも女子力の高い理由だ。
「ナマエ、来たよ」
どきどきと煩くなる鼓動。どうしてこんなに緊張しているのか自分でも分からない。
緊張するけど先輩に会えるのが嬉しい。
大勢の友達と喋りながら玄関へ向かってくる増田先輩をじっと見つめる。
声を掛けようか迷っていると、先に先輩の方がこちらに気づいた。
「ごめん、みんな先戻ってて」
「早く来ないとハゲに怒られるぞ〜」
「すぐ戻る」
友達にそう声を掛けた先輩が私とはるちゃんのいる所まで駆け足でやってきた。
「どうしたの?」
「え、っと…」
「この子、先輩に借りたハンカチを返したいそうなんです」
「ハンカチ?…あ〜!そっかありがとう!」
「い、いえ…あの、こちらこそありがとうございました…!」
ハンカチを渡す瞬間、指が触れそうでドキッとした。なんでこんなにドキドキするの?
なんか調子狂う!
「あれ?昨日の子じゃん」
「シゲ、戻ってなかったんだ」
「忘れ物取りに来た」
加藤先輩の出現にそっと隣のはるちゃんを盗み見ると目をキラキラ輝かせて控えめにじっと見つめていた。かわいいな。
「ふふ」
「?どうしたの?」
「あ、いや…なんでもないです」
「ていうか両膝ばんそうこうじゃん!本当にごめんね、シゲのせいで」
申し訳なさそうにする増田先輩にこっちまで申し訳ない気持ちになる。
「ほんとごめん」
「2人とも気にしないでくださいよ!ナマエってば先輩に会えるって嬉しがってたから」
「え?」
先輩に会えるって嬉しがってたのははるちゃんの方じゃない?!
「ふーん、そうなの?」
「え、はい…」
「名前は?」
「苗字ナマエです」
「ナマエちゃん、よろしくね」
「は、はい!」
え、え…?え?!なに、どういうこと…。よろしくされてしまったけど。嬉しい、けどなんで??これはるちゃんのおかげ…?
「私は加藤先輩に会えて嬉しかったです」
「ははは、ありがと。また会えるといいね」
「シゲ、そうじ行くぞー」
「おう」
「じゃあね、また」
笑顔で手を振って先輩たちは行ってしまった。
緊張からの解放に安堵する。
なんか色々あった気がするけど頭が追いつかない。
私、名前呼ばれた?よろしくされた?またって言ってもらえた?
さっきあったことをひとつずつ思い出してはそのひとつずつに嬉しい、って感情が湧き出る。
「ナマエ!」
「っ!」
はるちゃんに呼ばれて我に返る。
なにか気づきかけた気がしたけど、まあいっか。
「ありがとうナマエーー!」
「わっ!」
嬉しそうなはるちゃんが私をぎゅっと抱きしめた。
頬をほんのり紅く染めて満面の笑みのはるちゃんはとても可愛くて、もしかしてって。私、気づいたかもしれない。
「はるちゃんもしかして…」
「実は、そう…なんだよね。好きなんだ加藤先輩のこと。私なんか相手にしてもらえないだろうけど…ほら、好きになるのは私の勝手だし!」
笑ってそう言うはるちゃん。
いつからなんだろうか。憧れの先輩として好きなんだと思っていたのに、恋愛感情に変わっていたなんて。
「話せもしない相手だと思ってたから、ナマエのおかげだね!ありがとう!」
そう笑うはるちゃんはいつもより何倍も可愛くて恋する少女だった。なんだか羨ましい。
私にもいつか恋する時が来るかな?
「よし!掃除がんばるぞ〜!」
「あ、そうだった…今掃除の時間だったの忘れてた…」
だるいね、頑張ろう、なんて言いながら私たちはそれぞれの掃除場所へと移動したのだった。
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