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□お勉強タイム
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「ってことなんだけど」
加藤くんの男らしい指がとんとん、と教科書を叩く。
絶賛テスト勉強中なのだけど、どうしても分からない問題があったので勉強の出来る加藤くんに教えてもらった。
教えてもらった、のに分からない。
「……」
シャーペンを持ったままうんともすんとも言わない私の顔を覗き込む加藤くん。
近い…!そんな綺麗な顔でこっち見ないでほしい!加藤くんと比べてしまって自分の顔が恥ずかしくなる。
「あの、もうちょっと噛み砕いて教えて頂けると…」
嬉しいです、そう言えば彼はため息をひとつ。
「う〜ん、じゃあもう1回説明するから」
せっかく教えてくれている加藤くんのためにも理解しようと頑張る。頑張って集中して話を聞くけど大嫌いな数学だからなのか全く頭に入ってこない。どうしてその答えになるのか分からない。その数字はどこから…?
「ナマエ?聞いてる?」
「…聞いてる、聞いてるんだけど、分かんない…!どうしよう加藤くん…私バカだ…」
「これでも分かんないの?ナマエが数学苦手なのは知ってたけど…」
呆れたような顔をしている加藤くんに嫌われてないか心配になって泣きそうになる。
こんな事で加藤くんに嫌われたら私もう生きていけない。
「加藤くん、好きだよ…」
「は?いや、なんでそうなんの?!」
「数学出来なさすぎて加藤くんに嫌われてないか心配で…」
「そんな事くらいで嫌いになんてなんないから」
そう優しく慰めて私の頭を撫でてくれた。
加藤くんの手、落ち着くなあ。
「ありがとう」
「ん」
「けど、もうこの問題したくないから別のやろう?」
「それはダメ。そんな事してたら分からないままでしょ?」
テストに出たらどうするの、と加藤くんはシャーペンを持ち直した。
「ナマエが分かるまで俺も付き合うから」
正直、付き合わんでいいと思ったことは内緒にしておこう。
「分かった、頑張るね」
小さく握り拳を作ってみせると加藤くんは優しく微笑んでくれた。
うん、かっこいい。癒された。頑張る。
「加藤くん、この数字はどこからきてるの?」
「それは…」
数学は苦手で嫌いだけど、加藤くんとの時間が増えると思えば悪くないかもしれない。
わざと分からないフリを続けてみようかな、なんて。
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