長い夢「続・何度でも恋に落ちる」
□赤髪海賊団の
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「マ、マルコ隊長っ!」
1番隊の隊員が血相を変えて食堂に飛び込んできた。
「どうした?」
名無しさんとコーヒーを飲みながら、この先の進路について話をしていたマルコはいきなり名前を呼ばれて振り向いた。向かいに座る名無しさんも、ただならぬ雰囲気に顔を上げる。
「あ、あ、赤髪ですっ!」
「っ!」
「今、見張りの奴から赤髪の船が近づいてるって!」
マルコと名無しさんは顔を見合わせる。
「落ち着けよい。まさかいきなり攻撃したりしねぇだろい。おい、名無しさん。」
名前を呼ばれた名無しさんは、マルコと目を合わせると、小さく頷いて飛び込んできた隊員の方へ向かった。
「もう、目視できるの?」
「いや、見張り台の奴が双眼鏡で確認したんで、まだちょっと遠いかと…。」
そう言いながら、名無しさんとその隊員は足早に食堂を出て行った。その背中を見送ったマルコも、すぐに船長室へと向かった。
「どうだい。あっちから何か言ってきたかい?」
マルコは甲板に出ると、そこにずらっと並んだ隊員の間を縫って名無しさんの横に立った。
「それが…。」
名無しさんは困ったような顔をしてマルコの方に振り向いた。
「?」
「まぁ、自分で見てみなよ。」
そう言った名無しさんがマルコに双眼鏡を差し出した。マルコはそれを受け取ると、目を当てる。
「…。」
無言のまま双眼鏡を下ろしたマルコの眉間に皺が寄る。
「敵意は…ないと思っていいのかな?」
そんなマルコの様子を見た名無しさんがそう言うと、マルコはもう一度双眼鏡を覗いてから、大きくため息をついた。
「…オヤジに報告してくるよい。」
しかめっ面で船長室に向かうマルコの背中を他のクルーたちが不思議そうに見送る。
「姐さん、一体あっちは何て…?」
そう聞かれた名無しさんは、大きなため息をつくと、
「舳先に立った赤髪が、満面の笑みでこっちにブンブン手を振ってるの。」
と答えた。