続いてる夢

□10年ぶりだから
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※「大馬鹿野郎の恋」直後。そのままヒロインの部屋にて。


しばらく無言で抱き締め合っていた。
マルコが少し体をひいて私の顔を覗き込むと、そっとおでこにキスをしてくれた。顔を上げると、マルコの唇が私の唇に重なる。
自然な流れで、私はそのままベッドにゆっくりと押し倒された。唇から頬、首筋に移るマルコの唇と、シャツの中に入ってきた大きな手に、(10年ぶりにマルコに抱かれるんだ)と、思ったところで、私はあることに気が付いて

「あ。」
と声を上げてしまった。

「ん?どうした?」
マルコが動きを止めて私を見下ろす。

「あ…。いや、その…。」
どうしよう。言うべきか?でも、こうなったらきっとマルコは無理やりでも聞き出すだろう。

「なんだい?」
いい雰囲気を止められたことに対する不満を隠す様子もなく、マルコが口をへの字に曲げている。

「あ…。そ、その…10年ぶりだな、と思って。」

「…。だから、なんだい。」

「10年もたつと、ほら、いろいろ劣化してるからさ。」

「あ?」
一瞬わけがわからない、という顔をしたマルコは、私の意図を理解すると、あからさまに呆れたような顔をした。

「大して変わらねぇように見えるけどねぃ。」

「そう見せてるだけだよ。」

「それに、お互い様だろい。」

「いやいや。女の劣化と男の劣化は違うでしょ。」

「…。」
マルコはじっと私を見ると、シャツの中に入れていた手で私の腰のあたりを撫でまわした。

「ま、確かに若干肉付きはよくなったか?」

「っ!」
マルコはそう言うと、ニヤリと意地悪く笑う。

「でも、オレはこっちの方が好きだよい。昔のおまえは細すぎだ。」

「ど、どうせ凹凸がないですよ。」

「あの時も別に体に不満はなかったよい。鍛えられてる女もいいもんだと思ったねぃ。それに、10年も前のことだ。じっくり比較できるほど覚えちゃいねぇよい。」

「…その間にいろんな人とやってるしね。」

「…。」
マルコが仏頂面になる。

「で?だからしたくねぇとか言わねぇよな?」

「い、言わないけど…。」
でも、やっぱり不安だ。がっかりされたりするんじゃないかと思ってしまう。もう、そういうことで私を判断したりしないだろうとは思っているけど、やっぱり10年のギャップは大きい。
すると、マルコが大きくため息をついた。

「別に、おまえだったら何でもいいよい。多少劣化してようが、でっけぇ傷ができてようが、おまえであることに変わりはねぇ。それよりも。」
そう言うと、マルコは不貞腐れたように私を睨んだ。

「ここまできて、止められちまう方がよっぽどつれぇ。」

「わ、わかったよ。でも、で、電気消してよ。」
そう言うと、マルコは一瞬眉を上げたが、ふっと微笑むと、ベッドわきのスタンドに手を伸ばした。薄暗くなった部屋で、マルコが耳元で囁いた。

「安心しろい。余計なことは考えられねぇようにしてやるよい。」
その言葉通り、もう途中からはすべてがどうでもよくなった。
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