続いてる夢

□支援者へのご報告
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ゆっくりと目を開けると、違和感を感じた。
腕に触れる感触と、その気配に「ああ、そうだ。」と思い出す。
横に眠る人物を起こさないように静かに体を動かして、改めて自分の置かれている状況を確認する。
時計を見れば、もう朝食の時間が終わりそうだ。
オレはそっとベッドから抜け出すと、床に落ちていた服を着て食堂に向かった。
案の定、食堂はもうほとんど人がいなかった。
トレイをもって、料理の前に並んだ瞬間、

「マールコちゃん。」
というふざけた声が後ろから聞こえた。ポン、とオレの肩にサッチの手が乗る。

「見たぜ、昨日。」

「何をだい。」
オレは前を向いて皿にフルーツとパンを乗せる。

「部屋に連れ込むとこ。」

「コーヒー、二つ。」
カウンターの向こうの奴にそう言うと、サッチが「ひゅぅ〜」と口笛を吹いた。

「で、どうだったんだよ。」

「何がだい。」
コーヒーを受け取りながらそう答えると、

「わかってんだろ?名無しさんだよっ!」
そう言ってサッチはオレの背中をバシン、と叩く。痛ぇしコーヒーがこぼれたらどうすんだい。

「なんでおまえに報告しなきゃならねぇんだよい。」

「そりゃおまえ、みんなで応援してるんだから、支援者には報告義務があんだろーが。」

「何が支援者だ。からかってるだけだろい。」

「そんなことないぜ〜。ここんとこ荒れまくってたの知ってんだぞ。」

「…。」

「ナースたちも心配してたぜ?『最近名無しさん、なぜか私たちと一緒にいるのよね〜』『マルコさんを避けてるんじゃないかって言う子もいて』『この前の上陸の時も何かあったみたいだし』ってな。」

「おまえ、オレと名無しさんの話をネタにナースと会話する機会を作ってんだろい。」

「あ。バレた?でもよ、昨日も『名無しさんがマルコさんに連れていかれたんですっ!』って心配そうに言ってくるから、オレも一瞬とうとうマルコがキレたんじゃないかって心配になったんだぜ。」

「…。」

「でも、イゾウの奴がほっとけっていうからさ。」

「イゾウ?」

「ああ。『嫌がる女を無理やり手籠めにするなら、マルコも所詮その程度の男ってことさねぇ。ま、そもそもあの名無しさんが大人しく襲われるとも思えねぇけどな。』ってよ。」
下手なイゾウの物まねはこの際スルーだ。

「まー、それでも心配になって様子見に行こうとしたら、自分の部屋に名無しさんを連れ込むおまえを見た、と言うわけだ。で、連れ込むっても無理やりでもなさそうだったから大丈夫だろうと思ってな。」
そう言ってサッチはニヤッと笑った。

「お姫様はまだお部屋にいるんだろ?」

「けっ。何がお姫様だよい。」

「で、どうだったんだよっ!」

「それで言うと、イゾウの言う通りだい。オレは無理やりやらねぇし、名無しさんもそう簡単にやられるような女じゃねぇよい。」

「いや。そこじゃなくてさ。おまえのそのスッキリした顔見たら結果はわかってんだよ。」

「ああ?おまえは何が知りてぇんだよい?」

「だーかーらー!名無しさんはどうだったのかって聞いてんだよっ!」
トレイを持ったまま、オレは思わず天を(天井を)仰いだ。

「朝からくだらねぇこと言ってんじゃねぇよい。」

「くだらなくねぇだろっ!それなりに人生経験も豊富なマルコさんから見て、昨晩の率直な感想をだなぁ…。」

「うるせぇ、アホンダラ。」
必要なものをトレイに乗せ終えたオレは、サッチを無視して出口へと向かう。

「おい、待てよ!」
オレは大きく息を吐きだすと、まとわりついてくるサッチを横目で見た。

「あまりによすぎて無理させちまったお姫様がまだ部屋で寝てるんだ。早く部屋に戻らせろい。」

「…へ?」
ぽかんとするサッチを今度こそ無視して食堂を出ると、後ろの方で

「あああー!いいなー!マルコはよぉ!」
って叫び声が聞こえた。
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