続いてる夢

□聞かれていたのは オマケ
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まるでここ一か月近くのすれ違いを埋めるかのように、名無しさんはオレに抱きついていた。
今まで何度も触れたことはあった。ふざけて叩いたり、酔ったふりして肩に腕を回したり。だが、改めてその小さな背中にいとおしさを感じる。思った以上に柔らかい体とか、髪の毛の匂いとか、やっぱり女なんだと思う。
でも、やっぱり各言うオレも男で。やっと自分のものになった安堵やら、こいつのぬくもりでほっこりした気持ちが落ち着くと、ムラムラと別の感情が沸き上がる。
だが、それは街の女をひっかけるときとは全然違った。相手が女であり、やることは最終的には一緒じゃねぇかと言われちまえば確かにそうなんだが、大事だ、いとおしいと感じるくせに絞め殺しちまうくらい強く抱きしめたい衝動にも駆られる。
そっと胸のあたりにある頭を撫でると、猫みてぇにすり寄ってくる。

「おい。」

「ん?」

「寝てんじゃねぇよな?」

「寝てないよ〜。」
それこそ色気の欠片もねぇ呑気な返事が返ってくる。

「離せよい。」
と頭をつつく。

「やだ。」

「やだじゃねぇよい。」
子供じゃねぇんだ。

「いいじゃん。気持ちいいんだから。確かに寝そうだけど。」
確かに気持ちいいのはわかる。だが、オレはもうこれだけじゃ我慢できねぇ。

「…よくねぇよい。」

「宴会に戻るの?」

「いや。この体勢じゃなんもできねぇよい。」

「何すんの?」
オレの下心を全く理解していないのか、名無しさんは不思議そうに顔を上げた。その顎をさらに上にあげると、一瞬抗議の声があがるが、オレはその口を塞いだ。最初こそ驚いたのか、一瞬身を引いたから、オレは逃げられないように名無しさんの腰を抱き寄せた。もう一方の手で後頭部を抑える。しばらくすると、オレの舌の動きに応えるように、名無しさんの舌がぎこちなく動いた。時々ビクンと体を震わせるのに気をよくしたオレは、名無しさんのTシャツに手を入れて、その肌に直接触れた。女の体なんて、何度も触れたことがあるのに。腰を撫でるだけで興奮する自分に苦笑いする。
とは言え、誰が来るかもわからねぇ、ベッドもねぇ部屋でこれ以上は先に進むわけにはいかねぇと判断したオレは、名無しさんから離れると、まくり上げていた名無しさんのTシャツを整えた。乱れた息を整えながら、とろんとした目でオレを見上げる名無しさんに理性が吹っ飛びそうになる。

「場所、変えるよい。」

「え?」
オレは名無しさんの手を掴むと、ドアを開けて外に出た。名無しさんの手を引っ張って足早に自分の部屋の向かう。オレの部屋のドアを開けて名無しさんを引っ張り込むと、ドアのカギを閉めた。

「もう、我慢しねぇよい。」
今までこの部屋で何度も自分を抑え込んだことを思い出しながらそう言うと、名無しさんの腰を抱き寄せて口づけた。完全にオレに体を預けた形の名無しさんの膝に力が入らなくなったのに気が付いたオレは、名無しさんの手を引いて部屋の奥へ誘導するとそのままベッドに押し倒した。
名無しさんのTシャツを脱がそうとした時だった。

「あ!マ、マルコ?ちょっと待って!」

「あ?」

「シャワー、浴びたい。」
はぁ?

「却下だい。」
即答だ。

「え?な、何でっ!」

「もう我慢しねぇって言っただろい。」

「ダメだよ!今日の敵襲で汗だくなんだから!」

「別に汗臭くねぇし、オレはかまわねぇよい。」

「ダメダメ!返り血とかも浴びてるし!私は構うの!」

「…。ちっ。」
まぁ、言われてみればオレも散々暴れた上に酒くせぇ。とは言え、こいつがシャワーを浴びている間に大人しくベッドに座って待ってるなんて芸当は到底無理だ。
再び名無しさんに覆いかぶさると、

「だ、だから、シャワー…「わかったよい。」」
と抵抗する名無しさんを遮って、オレは強引に名無しさんの首からTシャツを抜き取った。そのまま背中に手を回して、ブラジャーも外す。

「え?ちょ、ちょっと!マルコっ!」
引ん剝かれるという表現がぴったりの状況で、胸を隠す名無しさんの腰を押さえつけると、今度は下着と一緒にズボンを下ろした。

「わ、わかったって言ったじゃん!」
と悲鳴のような声をあげる名無しさんを無視して、オレは名無しさんに背を向けると、オレ自身も素っ裸になった。体を隠すように丸まって、しかも目のやり場に困っているのかオレを直視できない名無しさんの腕を掴むと、無理やり引っ張り上げる。

「マルコ!え?」
困惑する名無しさんを無視して、オレはシャワールームのドアを開けた。中に入って名無しさんを引っ張りこむと、狭いせいで必然的にお互いの体が触れる。
文句はねぇだろう。そう思って名無しさんを見下ろすと、

「不貞腐れないでよ。」
と言った名無しさんが苦笑いしながらオレを見上げる。

「不貞腐れてねぇよい。」
そう即答したものの。その答え方自体が不貞腐れているようにしか聞こえないことに自分でも気が付く。困ったように微笑みながら名無しさんの手がすっと伸びると、オレの唇に名無しさんの柔らかい唇がそっと触れた。そのまま名無しさんの腕がオレの首に絡むと同時に、柔らかい肌が密着する。オレを上目遣いに見上げる名無しさんの表情にオレは固まった。目も唇も、オレに絡まる腕も吸い付くように触れる肌も、すべてがオレを誘っていた。冗談でも今後「色気がねぇ」なんてセリフは吐けねぇと思った。だが、固まるオレを見てその色気の塊のような表情が消えたかと思うと、名無しさんは不思議そうに首を傾けてオレの名前を呼んだ。

「マルコ?」
そう呼ばれてやっと素っ裸で抱き合っている現実に引き戻されたオレは、ここから先はもう細かいことを考えるをやめた。
本能のままに、目の前の「獲物」をむさぼった。
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