短い夢@
□SかMか?
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外は土砂降りだった。しかも、風も強かったから、モビーはかなり揺れていた。
ただ、そんなものには慣れっこの隊長陣は、会議を終えてうだうだしていた。
「よく降るよい。」
マルコが丸い窓の外を見ながらため息をつく。
「今出たらずぶ濡れだな。」
ビスタもマルコと同じ窓を見ながら言った。
会議はもう終わっているのだが、今会議室を出ると濡れるのがわかっているから誰もその場を離れない。能力者に至っては、この揺れで落ちたらさらに面倒だから、少し状況が収まるのを待っているのだ。
やることもなく、会議室に閉じ込められた野郎ども。酒もないのに一部の奴らが「男子トーク」を始めた。
「なぁなぁ、この前の島から入ったあの新人ナース!いい脚してると思わねぇ?」
「やっぱりサッチは足フェチなんだね。」
「それがよぉ、ハルタ、脚もいいが胸もでけぇぞ、あの女。」
「相変わらずそういうチェックは誰よりも早いな。」
イゾウが懐から出した銃の手入れをしながら呆れたようにぼやく。
「あー。そう言えば、うちの隊の新人もあのナースに目ぇつけてたなぁ…。」
「二番隊の新人か?新人のくせに生意気なっ!」
「しかも『オレ、あの足に踏まれたいっす!』って言ってたんだよ。」
「マジか!そっちか?」
「オレにはその気持ちは全然理解できん。」
エースがそう言うと、サッチは腕組みをしながら
「うーん。わからなくもねぇかなぁ…。でも、あの子、SってよりMだと思うぜぇ。」
と唸る。
「何?エースんとこの新人はMなの?」
ハルタがそう聞くと、エースは首をひねる。
「さぁなぁ。でも、その話を聞いた他の奴が、『おまえ、踏んでもらいたいなら名無しさんさんに頼めよ』とか言うからさぁ…。」
「うわぁ!M男を踏む名無しさん、超想像できる!」
サッチが自分の膝をバシバシ叩きながら大うけする。
「オレが、『しょっちゅう名無しさんに蹴られてるオレの前でそういうこと言うなよっ!』って言ったら『エース隊長、羨ましいっす!』だって。」
「うわ!そいつ、ガチだ。」
「いやいや。それがそいつだけじゃねぇんだよ。そこにいた二番隊の奴らの何人かが『いいな~。オレも名無しさんさんに怒られたいー』とかって言いだすんだ。」
「…何?名無しさん、意外と人気あんの?しかも、そっち系?」
サッチが目を丸くすると、
「ま、きれいな顔はしてるな。」
とイゾウが手入れを終えた銃を懐にしまいながら言った。
「鞭とか持たせたら似合うよな。」
エースが遠くを見ながらそう言うと、身震いをする。
「女王様か。」
サッチがくくっと笑ったところで、
「全く。貧相な想像力だよい。」
とマルコがため息をつきながら口をはさんだ。
「ありゃSじゃねぇ。ああいうのこそ、ベッドの上じゃ男に従順なんだよい。」
「えー。そうかぁ?絶対あいつは男の上に乗っかってるぜぇ。」
サッチが納得いかないと反論する。
「あの性格と見た目だからねぃ。男もビビって寄ってこねぇのかあんまり経験もねぇみてぇだしな。普段しっかりしてる分、隙を見せていい相手だと判断したらとことん甘えてくるからかわいいもんだよい。」
そう言うと、マルコは目の前に広げていた書類を片付けだした。
一方の隊長陣は全員首をかしげる。
「マルコ、おまえの発言、なーんかおかしくねぇか?」
サッチが恐る恐るマルコに声をかけると、マルコが意味深な笑みを浮かべた。
「え?!マ、マルコ、おまえっ!」
エースが怒鳴った瞬間、会議室のドアをノックする音が響いた。