短い夢@
□海賊だろっ!
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ぐっすり寝たオレは、いつも通りに食堂で朝飯を食った。視界の片隅で名無しさんが食堂に入ってきたことを確認する。食い終えたのか、名無しさんが立ち上がったところで、オレも席を立って名無しさんに声をかけた。
「名無しさん。」
「…。何ですか?」
思いっきり不機嫌な顔をしてオレを睨む名無しさんに、思わずオレがふっと笑うと、名無しさんの眉間の皺が深くなる。オレは素早く名無しさんの腕を掴んで体を引き寄せると、食堂のど真ん中で名無しさんにキスをした。
「ええぇ?!」
「あ?ああああ?!」
周りで驚きの声が上がる。唇を離すと、名無しさんは真っ赤な顔をして口をパクパクしていた。
「安心しろ。もう酔っちゃいねぇよい。」
「そ、そういう問題じゃ…。」
名無しさんがオレに文句を言おうとした瞬間、
「何だよっ!誰だよ、名無しさんがマルコ隊長にふられたとか言ってたのはっ!」
「ガセネタじゃねぇかっ!」
と周りにいた男たちが口々にヤジを飛ばした。オレは名無しさんの手を掴んだまま屈みこむと、周りのヤジに気を取られている名無しさんを肩に担いだ。
「ちょ、ちょっと!何やってるんですかっ!」
名無しさんの抵抗を無視して、オレは
「名無しさんはオレのもんだ!手ぇ出すんじゃねぇぞっ!」
と食堂全体に言い放った。
「な、何勝手なこと言ってんの!降ろしてよっ!」
と名無しさんが足をばたつかせて暴れた。
「それと、しばらくオレの部屋に近づくんじゃねぇ。」
それだけ言うと、オレは名無しさんを担いだまま、自分の部屋に向かった。
「お、降ろしてよっ!」
「落ちるだろい。暴れんじゃねぇよい。」
「ふざけんなっ!」
行き交う奴らが不思議そうにオレ達を見送るが、誰もオレを止めはしねぇ。
そのままオレの部屋でベッドの上に名無しさんを下ろすと、名無しさんが起き上がる前にその上に馬乗りになった。下からオレを睨む名無しさんの頬を撫でると、
「好きだ。」
と告げた。名無しさんの口がへの字に曲がる。
「おまえが手に入るなら、隊長の立場も利用してやるよい。」
そう言いながら、もはや抵抗をやめた名無しさんにそっと口づけると、
「極端すぎなんだよ…。」
と愚痴ったあと、オレの首に腕を回して抱き着いてきた。