Harry Potter  ビル

□真相
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クラルスはゆっくりと杖を構えていた腕を下ろした。

シ「君は・・・」

ハマ「お姉ちゃん・・・なんで、ここに・・・」

床には縄で体中を縛られ動きを封じられているルーピン先生がいた。
床に転がっているルーピン先生もクラルスの登場に目を見開いて驚いていた。

クラルスは今度はルーピン先生に杖を向けた。

シ「っなにを・・・」

『エマンシパレ』

シ「な、ん?」

ル「え、あ、あぁ・・・」

『エピスキー、フェルーラ・・・ごめんね、ロン、
 私はポンフリー先生のようには治せないの・・・これで我慢してね・・・』

ロ「い、いや、十分だよ・・・」

クラルスは攻撃をするわけでもなく、解放呪文を使ってルーピン先生の縄を解いた。
そして、怪我をするロンを見つけると、そばに駆け寄って、傷口を塞ぎ包帯を巻いた。
シリウス・ブラックは訳が分からないといった表情をしていた。
ルーピン先生は縄が食い込んでいた腕を摩りながら、立ち上がった。

ル「クラルス、ありがとう。
  でも、君までここに来ていたとはね・・・」

『ごめんなさい、じつは魔法省に登録されている"動物もどき"の辺りから、聞いていました』

ハマ「っお姉ちゃん、が、先生を攻撃してしまった・・・
   大変よ、ものすごい規則破りになるわ・・・」

ハーマイオニーは倒れたスネイプ先生を見て、泣きそうな声を出した。
クラルスはそんなハーマイオニーを安心させるよう、微笑みを浮かべた。
問題ない、と伝えるように微笑んだ。

ハリ「そうだよ・・・ハーマイオニーの言う通りだよ・・・」

『大丈夫よ、スネイプ先生には見られていないはずだから』

シ「いや、私に任せておくべきだったんだ・・・こんな・・・」

ルーピン先生がクラルスの肩に手を置いた。
その顔は困ったような、それでも仕方がないといった表情だった。

リ「君は、ハーマイオニーが怒鳴られたことに、怒ったのだろう?」

ルーピン先生はクラルスがこんな行動を起こした理由に検討がついているようだった。
クラルスは肯定するように頷いた。

『9割はその通りです、理不尽にもこの人はハーマイオニーを侮辱した。
 冷静な判断も下せず、目の前の復讐だけに囚われて、真実より自分の欲望を優先させた。
 そんな人に、ハーマイオニーを侮辱する資格なんてない。
 バカ娘?ハーマイオニーほど優秀な魔女はいないわ。
 先生を攻撃?これっぽっちも後悔はしてないわ。
 残り1割は・・・、ルーピン先生を侮辱したから。
 人を見下すにも、限度というものがあるわ』

人狼という苦しい人生を歩んできたルーピン先生を、
スネイプ先生はいとも簡単に"飼いならされた人狼"などと言って侮辱した。
それもクラルスにとっては、許しがたいことだった。

ハマ「あぁ、お姉ちゃん、そんな・・・でも、すごく、嬉しい・・・」

ロ「クラルスってほんとにとんでもないや・・・」

ハリ「でも、どうしてここが・・・」

ハーマイオニーはクラルスの姉妹愛に胸を打たれ、頬を染めている。
ロンは、さらっと言葉を紡ぎ姉妹愛を暴露するクラルスに口が塞がらないようだ。
ハリーの言葉にクラルスはローブから"忍びの地図"を取り出した。

何人かが、あっ、という声をあげた。

『冷静な判断ができていれば、地図を机の上に出しっぱなしにすることも、
 この地図をスネイプ先生が見ることも、
 ・・・・スネイプ先生が"これ"を机に置いていくこともなかったわ』

"これ"とは脱狼薬が入ったゴブレットである。
クラルスはなにも言わずに脱狼薬の入ったゴブレットをルーピン先生に押し付けた。
早く飲んで、と言わんばかりである。
ルーピン先生は申し訳なさそうに、クラルスからゴブレットを受け取った。

ル「君は、この地図の使い方を知っていたのかい?」

『はい、以前から知っていました。何度か使ったこともあります』

ハマ「お姉ちゃんが?」

『もちろん、悪戯にじゃなくて、図書館で勉強してて授業に遅れそうなときとか、
 そういう時に、この地図で覚えた近道を使ったくらいよ?
 ハーマイオニー、前に言ったでしょう?私は人より多くの抜け道を知ってるって。
 近道も抜け道も、この地図で覚えたのよ』

ハーマイオニーは信じられないような顔でクラルスを見つめた。
ロンとハリーはさすが・・・と感動をしていた。
クラルスはばつが悪そうな表情で、でも最後は微笑みを浮かべた。

『親友が悪戯好きだから、少しくらいその影響を受けていても不思議じゃないわ。
 ・・・ルーピン先生と一緒よ』

クラルスの目線はまっすぐとルーピン先生に向いていた。
ルーピン先生はゴブレットの中身を顔を歪めながら飲んでいた。
そして、飲み切ると空になったゴブレットは床に置かれた。

シ「リーマス、彼女は何者なんだ」

『ただの、グリフィンドール5年生です』

ル「彼女は、私が出会った魔女の中で最も聡明で、とても心の優しい女性だよ」

クラルスは簡単に簡潔に応えたが、被せるようにルーピン先生がしゃべる。
ルーピン先生は以前の何倍も上回った褒め言葉で、クラルスを表現した。
さらに、そのまま指をクラルスの目元に滑らせ、優しく撫でる。
クラルスの目元は涙を流し続けたことによって、赤く腫れていた。

ル「この涙も、私の境遇を思って、流してくれた涙なんだろう?」

『先生の苦しみや葛藤が、少しだけ理解できてしまったから・・・』

ル「クラルス、君はほんとうに、優しい人だ・・・」

ルーピン先生は目元を撫でていた手を上に滑らせ、髪を梳くように撫でて離れた。
クラルスはそれに安心を抱きつつ、ハーマイオニーのもとに歩み寄ると、
改めて無事を確認するかのように1度ギュッと抱きしめて、隣に立った。

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