Harry Potter  ビル

□増える悩み
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クリスマス休暇を終えて、ホグワーツに戻ってきた。

クラルスはどうしたものかとため息をつきたくなった。
ハリーとロン、ハーマイオニーがまた喧嘩をしたらしい。

ハリーのところにクリスマスプレゼントとして、箒"ファイアボルト"が
届けられた。送り主は不明。
ハリーは前回の試合で大切な箒を失ってしまったため、
ロンと一緒にこのプレゼントをたいそう喜んでいた。
しかし、ここでハーマイオニーがこの箒はシリウス・ブラックから
贈られてきたものじゃないかと考え、ハリーの身の安全を考えて、
独断でマクゴナガル先生に報告。
そのため、箒"ファイアボルト"はマクゴナガル先生が他の先生とともに
呪いが掛けられていないか調査することになりハリーから没収した。
しかも、分解して調べるということなので、ハリーとロンはなおさら
ハーマイオニーに対して腹を立ててしまった。
ハーマイオニーもためになることをしたと揺るぎない信念をもち、
談話室を避けるようになり、図書館に入りびたりになっていた。

『(ハリーとロンの気持ちもわかるけど、ハーマイオニーの気持ちもわかる。
  ハーマイオニーもこういうところが不器用なのよね・・・)』

クラルスはとうとう、こらえきれずにため息をついた。

木曜の夜、監督生としての校内の見回りを行っていた。
クリスマスが終わったばかりで校内はとても冷えていた。
時折、どこからか入ってきた風が冷気となり足元を通り抜ける。

『・・・あら?』

クラルスは廊下にある甲冑の影に誰かが座っているのが見えた。
覗き込むと、疲れた顔をしたハリーがいた。

『どうしたの?具合でも悪いの?』

「ううん、大丈夫だよ」

『…私にできることはある?』

クラルスはハリーの視線に合わせるようにしゃがみ込んだ。
ハリーは心ここにあらずといった感じだったが、やがてクラルスに目線をむけた。

「クラルスは・・・」

『なぁに?』

「一番幸せだった想い出って、すぐ出てくる?」

『幸せな想い出?』

クラルスはなんとなく察しがついた。
ハリーが"エクスペクト・パトローナム"を練習している、と。
きっと吸魂鬼対策なのだろうと。
クラルスは幸せな想い出について考えた。

『一番ってなると難しいかな・・・でも、いくつかは思い浮かぶよ』

「そっか・・・」

『ハリーはどう?』

「僕もあるよ、でも・・・」

『それでも、弱いんだね?』

「うん・・・」

"エクスペクト・パトローナム"はクラルス自身も成功したとはいえない呪文。
上手くアドバイスをしてあげたいが、なかなか難しい・・・。

『アドバイスになるかわからないけど、言ってもいい??』

「うん、お願い、クラルス」

『きっと思いつめるほど、ダメだと思うの。
 リラックスしてふと思い出した想い出が記憶に強く刻まれた想い出だと私は思うかな』

「リラックス・・・」

『まだ半人前の魔法使いの私がいうことだから、あてにはならないけどね』

ハリーは立ち上がって、チョコレートを一欠けら口に放り込んだ。
その顔には疲れが浮かんでいるが、心はちゃんとここにあった。

「ありがとう、クラルス、リラックスしてみるよ」

『少しでも助けになれたのなら嬉しいわ』

ハリーはグリフィンドール塔に戻っていった。
しかし、ハリーがなんでもないように一言を残していった。
"ルーピン先生は僕の父と友人だった"…と。胸がとてもざわついた。
クラルスの中でパズルのピースが少しずつ埋まっていく、そんな感覚だった。
クラルスは頭を左右にふり、無理矢理、思考を中断させた。

『(見回りを、続けよう・・・)』

止めていた足を動かした。


その様子を物陰から見ている人がいたことに気づかなかった。



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