Harry Potter  ビル

□夏の出逢い
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4年生になる前の夏季休暇、
クラルスは夏季休暇が始まって2週間ほどたったある日、
1人出掛ける支度をしていた。

「お姉ちゃん、出掛けるのね?」

『え、ええ、友達に誘われてね!』

クラルスは若干どもりながら、自然を装って答えた。
少しの罪悪感を抱えて。

友達・・・相手は、ビルだった。

あれからビルとの文通は順調に続いていた。
ペースとしては1-2週間に1通で、内容は主に近状報告だった。
そして、夏季休暇に入ってすぐ、ビルから逢わないかと言われた。
7月中はエジプトから帰って来ているらしい。
8月に入る前には帰ってしまうので、その前に良ければと。

クラルスは悩みに悩んで、了承の返事を出した。
逢いたい気持ちは一緒だったが、
フレッドとジョージに内緒でお兄さんに会うことや
妹のハーマイオニーにも話せないことに悩んだからである。
でも、それでも、逢いたい気持ちが勝ってしまったのだ。

『じゃあ、行ってきます』

「いってらっしゃい、お姉ちゃん」

上半身と下半身の切り替えの部分からゆるく伸びるひだが綺麗な
ブラウンのワンピースを着て、薄手のカーディガンを羽織る。
今日は髪を横に纏めて結って流している。

ハーマイオニーは姉のクラルスの女らしい恰好に憧れていた。
柔らかい雰囲気をもつ姉だからこそ、なおさら似合っていた。

ビルとはダイアゴン横丁にあるカフェで待ち合わせていたので、
まずは漏れ鍋に向かった。

『ちょっと早かったかも・・・』

無事にダイアゴン横丁へたどり着けたが、
そのカフェの前に着いたのは約束の時間より15分も早かった。
ビルからは目印にテーブルに花でも置いておくよ、と書いてあった。
カフェに入るといくつかあるテーブルのうち奥の方に、
小ぶりの花束が置かれたテーブルに見覚えのある赤髪をもつ男性が1人座っていた。
あの双子たちと同じ赤髪をもつ人はその身内だけだろう。
クラルスは緊張しながらそのテーブルに近づいた。

『…あの、』

「やぁ、クラルス」

クラルスが恐る恐る話しかけたのに対して、ビルの方はまるで確信しているかのようだった。

「双子の弟たちから写真を見せてもらったことがあるからね」

『…そういえば、ロンも同じ事を言ってたかも』

クラルスは双子がウィーズリー一家にいろいろと話していることを思い出して、
恥ずかしそうにうつむいた。
いったい、私のなにが楽しくて話しているのか…

『恥ずかしい…です…』

「でも、そのおかげで出逢えたんだから。僕は良かったよ」

クラルスはなおさら恥ずかしくなった。
そして、改めてビルを見てみた。
ウィーズリー家特有の燃えるような赤髪は伸ばしてポニーテール、
片耳だけ牙の形のイヤリングをしている。
座ってるから定かではないけど、テーブルから飛び出している足を見るときっと背も高い、
服装もおしゃれ…顔つきも端正…。
もう、かっこいい、としか思い浮かばなかった。

「…そんなに見つめられたら照れてしまうよ?」

『っあ、ごめんなさい』

「大丈夫だよ、さぁ座って」

ちょっとだけ見るつもりが、思ったよりも見つめてしまったらしい。
ビルは少し照れくさそうに頬を掻いていた。
クラルスは立ったままだったので、ビルに勧められて向かいの席に座った。

「何か飲む?僕もおかわりを注文するから」

『じゃあ、ミルクティーをお願いします』

「ミルクティーね、僕は…」

ビルは店員さんに注文をいれると、すぐに持ってきてくれた。
クラルスは緊張をほぐそうと、ミルクティーを口にした。


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