Harry Potter  ビル

□真相
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ル「それでは、証拠を見せるときが来たようだ」

シ「君・・・ピーターを渡してくれ、さあ」

シリウスがロンに向かって手を差し出した。
ロンはスキャバーズをますますしっかりと胸に抱きしめた。

ロ「冗談はやめてくれ、
  スキャバーズなんかに手をくだすために、わざわざアズカバンを脱獄したって言うのかい?
  つまり・・・」

ロンは助けを求めるように、クラルスやハリー、ハーマイオニーを見た。
クラルスは視線を受けて、シリウス・ブラックに向けて口を開いた。

『・・・もし、ペティグリューがスキャバーズに成り代わっていたとしても、
 長い間、アズカバンに閉じ込められていたあなたが、
 どうやってそれを知って、ここにいることを見つけたのか、
 それを先に、説明してくれませんか?』

ル「そうだとも、シリウス。まともな疑問だよ。
  あいつの居場所を、どうやって見つけたんだい?」

ルーピン先生もシリウスに向かってちょっと眉根をよせた。
シリウスはローブの中からクシャクシャになった紙の切れ端を取り出した。
それは一年前の夏、"日刊預言者新聞"にのったウィーズリー家の写真だった。
ロンの肩にスキャバーズがいた。

ル「いったいどうしてこれを?」

シ「ファッジだ。去年、アズカバンの視察に来たとき、もらった新聞だ。
  ピーターがそこにいた。一面に…この子の肩に乗って…私はすぐにわかった…
  こいつが変身するのを何回見たと思う?
  それに、写真の説明には、この子がホグワーツに戻ると書いてあった…
  ハリーのいるホグワーツへ…」

ル「なんたることだ・・・」

ルーピン先生がスキャバーズから新聞の写真へと目を移し、
またスキャバーズの方をじっと見つめながら静かに言った。

シ「こいつの前足だ・・・」

ロ「それがどうしたって言うんだい?」

シ「指が一本ない」

ル「まさに。
  なんと単純明快なことだ…なんとこざかしい…あいつは自分で切ったのか?」

ルーピン先生がため息をついた。

シ「変身する直前にな。
  あいつを追いつめた時、あいつは道行く人全員に聞こえるように叫んだ。
  私がジェームズとリリーを裏切ったんだと。
  それから、私が奴に呪いをかけるより先に、奴は隠し持った杖で道路を吹き飛ばし、
  自分の周り5、6メートルにいた人間を皆殺しにした・・・
  そしてすばやく、ネズミがたくさんいる下水道に逃げ込んだ・・・」

『現場に残っていたピーター・ペティグリューの体の一部が、指だった・・・』

ル「よく覚えていたね、クラルス。その通りだよ」

クラルスは"日刊預言者新聞"で読んでいた記事を思いだした。
ピーター・ペティグリューの残骸で一番大きなのが指でそれが母親のもとに届けられたと。
たしかにスキャバーズには指が一本ないことに該当する。

ロ「だって、たぶん、スキャバーズは他のネズミと喧嘩したかなんかだよ!
  こいつは何年も家族の中で"お下がり"だった。たしか、」

ル「12年だね、たしか。
  どうしてそんなに長生きなのか、変だと思ったことはないのかい?」

ロ「僕たち…僕たちが、ちゃんと世話してたんだ!」

ル「今はあんまり元気じゃないようだね。どうだね?
  私の想像だが、シリウスが脱獄してまた自由の身になったと聞いて以来、
  やせ衰えてきたのだろう・・・」

ロ「こいつは、その狂った猫が怖いんだ!」

ロンは、ベットでゴロゴロと喉を鳴らしているクルックシャンクスを指さした。

『(クルックシャンクスもここにいたのね・・・)』

シ「この猫は狂っていない。
  私の出会った猫の中で、こんなに賢い猫はまたとない。
  ピーターを見るなり、すぐに正体を見抜いた。
  私と出会った時も、私が犬でないことを見破った。
  私を信用するまでにしばらくかかった。ようやっと、
  私の狙いをこの猫に伝えることができて、それ以来私を助けてくれた・・・」

ハマ「それ、どういうこと?」

シ「ピーターを私のところに連れてこようとした。しかし、できなかった・・・
  そこで私のためにグリフィンドール塔への合言葉を盗み出してくれた・・・
  誰か男の子のベット脇の小机から持ってきたらしい・・・」

それが、ネビルの合言葉をまとめたメモだった、と。
でも、所詮は猫とネズミ、誰が見ても猫がネズミを襲っているようにしか見えない。
それで両者の飼い主は自分のペットを守ろうと、喧嘩をした。

『(でも、もっと他のやり方はなかったのかしら?)』

シ「しかし、ピーターは事のなりゆきを察して、逃げ出した・・・
  クルックシャンクスはピーターがベットのシーツに血の跡を残していったと教えてくれた。
  たぶん、自分で自分を噛んだのだろう・・・
  そう、死んだと見せかけるのは、前にも一度うまくやったようだし・・・」

ハリ「それじゃ、なぜピーターは自分が死んだと見せかけたんだ?」

ハリーはハッと我に返ったように、激しい語調で聞いた。

ハリ「おまえが、僕の両親を殺したと同じように、
   自分もを殺そうとしていると気づいたからじゃないか!」

ル「違う。ハリー・・・」

ルーピン先生は口を挟んだ。

ハリ「それで、今度は止めを刺そうとやってきたんだろう!」

シ「その通りだ」

シリウスの目は殺気立っており、じっとスキャバーズを見ている。

ハリ「それならっ、クラルスだって攻撃なんかしないで、
   スネイプにお前を引き渡すべきだったんだ!」

ハリーがクラルスを指差して叫んだ。
クラルスは話の矛先を向けられたことですっと目を細めたが、黙ったままだった。

ル「ハリー、わからないのか?
  私たちは、ずっと、シリウスが君のご両親を裏切ったと思っていた。
  ピーターがシリウスを追いつめたと思っていた…しかし、それは逆だった。
  わからないかい?ピーターが君のお父さん、お母さんを裏切ったんだ・・・
  シリウスがピーターを追いつめたんだ・・・」

ハリ「っうそだ!!!」

ハリーが叫んだ。

ハリ「ブラックが"秘密の守人"だった!ブラック自身があなたが来る前にそう言ったんだ。
   こいつは自分が僕の両親を殺したと言ったんだ!!」

ハリーは今度はシリウスを指差した。シリウスはゆっくりと首を振った。
落ち窪んだ眼が急に潤んだように光った。涙声だった。

シ「ハリー・・・私が殺したのも同然だ。
  最後の最後になって、ジェームズとリリーに、ピーターを守人にするように勧めたのは私だ。
  ピーターに代えるように勧めた・・・私が悪いのだ・・・
  確かに、2人が死んだ夜、私はピーターのところに行く手はずになっていた。
  ピーターが無事かどうか、確かめに行くことにしていた。
  ところがピーターの隠れ家に行ってみると、もぬけの殻だ。
  しかも争った跡がない。どうもおかしい。
  私は不吉な予感がして、すぐ君のご両親ところへ向かった。
  そして、家が壊され、2人が死んでいるのを見たとき・・・私は悟った・・・
  ピーターがなにをしたのかを。私がなにをしてしまったのかを」

ル「話はもう十分だ」

クラルスはルーピン先生の声を聞いて、びくっと体を震わせた。
その声は今までに聞いたことのない、情け容赦のない響きがあった。

ル「ほんとうは何が起こったのか、証明する道はただ一つだ。
  ロン、そのネズミをよこしなさい」

シ「無理にでも正体を顕させる。
  もし本当のネズミだったら、これで傷つくことはない」

ルーピン先生が答えた。
ロンはためらったが、とうとうスキャバーズを差し出し、ルーピン先生が受け取った。
スキャバーズはキーキーと喚き、のた打ち回り、小さな黒い目が飛び出しそうだった。
いままでのぐったりとしていたネズミの姿はそこにはなかった。

ル「シリウス、準備は?」

シリウスはスネイプ先生の杖を掴むと、ルーピン先生が掴むネズミに近づいた。
先ほどまで涙で潤んでいた眼は、うって変わって燃え上がっていた。

シ「一緒にするか?」

ル「そうしよう」

ルーピン先生はスキャバーズを片手にしっかりつかみ、もう一方の手で杖を握った。
クラルスたちの目線もスキャバーズに向いていた。

ル「三つ数えたらだ。いち・・・に・・・さん!」



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