Harry Potter  ビル

□増える悩み
2ページ/6ページ


クラルスはハーマイオニーと一緒に勉強していた。
2人の周りには教科書・辞書・ノート・・・本という本が山になっている。
ただ必死に読み漁り、図式を書き、ノートに書き込むを繰り返す。
2人の間に会話はほとんどないが、時折ハーマイオニーがクラルスに質問をすることはある。
クラルスにとっては慣れたものだが、ハーマイオニーは違う。
膨大な負担を感じて、目の下の隈も目立つようになってきた。
クラルスは出来るだけその負担を減らせるように、紅茶を入れたり、
ためになる参考書を探し出して渡してていた。

またクラルスが校内を見回りをする当番がやってきた。
前回と同じコースで校内を歩く。

『あら、ハリー』

「やあ、クラルス」

『あいかわらず疲れた顔をしているわね』

「それ、ハーマイオニーに言ってあげてよ」

クラルスはハリーの言葉に苦笑いを浮かべるしかなかった。
ハーマイオニーの顔の疲れは一向に消えることはなかった。

「クラルスもそうだけど、どうやったらあんなにたくさんできるの?」

『聞き慣れた質問ね。答えは単純、知識を得たいからよ。
 まぁ、時間を上手く使ってるのよ』

「・・・わかんないや」

『まぁ、難しいことだからね』

逆転時計のことを説明できれば手っ取り早いのだが、
そのことは使ってる本人または使ってる者同士しか話してはならない決まり。
上手い説明方法が見つからない。

「じゃぁ、僕は戻るね」

『えぇ、寄り道しないようにね』

手を振ってハリーが見えなくなるまで、その場で見送った。
ハリーが"エクスペクト・パトローナム"を成功させたのかはわからないが、
練習につきあってくれる先生がいることを羨ましく思った。

「なにしてるんだい?」

『っひゃ』

特別講習かぁいいな〜と思いに耽っていたところに、後ろから声を掛けられ、
肩を飛び上がらせて驚きの声を出してしまった。
振り返るとクスクスと笑っているルーピン先生がいた。

「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど、ね」

『…笑いを収めてくれたら、許します』

「ごめんね、っふふ」

クラルスの驚きようがよっぽど面白かったらしく、
笑い声は収まったが表情はまだ笑っている。

「見回り、ごくろうさま」

『ルーピン先生もお疲れ様です。こんな時間まで大変ですね』

「これも教師としての務めだよ」

ルーピン先生が歩き出して、クラルスも合わせて歩き出した。
見回り順路がルーピン先生の進行方向なので並んで歩く。

・・・少しの間、無言が続く。

「"一を聞いて十を知る"」

『はい?』

ルーピン先生がなんの前触れなく口を開いた。

「いや、君にピッタリの言葉だなって思って。
 でも君は十を知っても、それを誰にも言おうとはしないね」

『・・・・・・』

「誰にも言わないからこそ、君がどこまで知っているのかがわからない」

ルーピン先生の口調はいつものようにゆっくりで、優しい。
反対にクラルスの背中に冷や汗が流れるのを感じた。

「君の中では、以前に言っていた仮説は、今では確証に近いと思っているよ。
 この前もハリーから、私の交友関係を聞いたはずだよ。
 私は・・・」

『っルーピン先生』

言葉を遮った。これ以上、ルーピン先生の言葉を聞いてると、
考えていたことを全部、しゃべってしまいそうな気がした。

『私は先生が思うほど、賢くはありません。
 私の知っていることが、正しいとも限りません。
 誰にも言わないのは、言う必要がないと思っているからです。
 私が言ったことで、そのせいで、誰かが傷つくのはイヤなんです』

「君は・・・」

クラルスはルーピン先生に向き合い、真っ直ぐと目を見た。
もうこれ以上はしゃべらないという意味をこめて。
ルーピン先生にその意思が伝わったのかはわからないが、
その表情は困ったように苦しそうに、ゆがんでいた。

『・・・失礼します』

その顔を見ていられなくて、クラルスは足早に立ち去った。
胸が苦しかった。

ルーピン先生はその場から動かなかった、否、動けなかった。
想像以上に、クラルスは知っているんだとわかったから。

「賢すぎるのも、考えものだな・・・。
 嫌われちゃったかな・・・。」

人狼のこと、学生時代のこと、友人関係・・・
どこまで彼女は気づいているのだろうか・・・



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ