Harry Potter  ビル

□監督生
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ルーピンは、クラルスの顔を覗き込んだ。

「悩み事かい?クラルス」

『たいしたことじゃないんです・・・』

「でも、悩んでることがあるんだね」

ルーピン先生から見てクラルスはとくに優秀な生徒だった。
多くの生徒から慕われ、先生方からの評判もいい。
礼儀正しく、所属寮や学年など関係なく優しく接する。
"才色兼備"その言葉がぴったりと合う生徒だった。
それが今は、泣きそうな苦しそうな顔をしている。

「私には話せないことかな?」

『・・・監督生としての在り方で、ちょっと』

「監督生としての在り方?」

『その、ルーピン先生にいうのもおかしな話なんです。
 監督生として友人の悪戯を止められないことを指摘されて・・・』

「・・・なるほど…ククッ」

『??』

クラルスは笑い出したルーピン先生に驚いた。
ルーピン先生は肩を震わせ声を押し殺すように笑っていた。
いつまでも笑い続ける様子にクラルスはムッとした。

「すまない、驚いてしまってね。ハハッ」

『そのわりには楽しそうですよ・・・』

「本当にすまない、・・・まさか私と同じことで悩んでいたとは思わなくてね」

『どういうことですか?』

クラルスは意味が分からなかった。
笑いが収まったルーピン先生は理由を話してくれた。

「今から話すことは他言無用だからね。
 ・・・私も監督生だったのは知っているね」

『はい』

「その時の私も、君と全く同じことで悩んでいたんだよ。
 ・・・私の親友もフレッドやジョージに負けないほどの悪戯好きだったんだ。
 親友の2人を筆頭に私ともう一人の4人で、様々な悪戯をしていたんだ」

クラルスは想像ができなかった。
あのルーピン先生が学生時代は悪戯小僧だったなんて・・・
言葉が出ないクラルスを見て、ルーピン先生は小さく笑った。

「それで私は、親友2人の抑制役として監督生に選ばれたんだ。
 でも、結果として見事にそれは失敗したよ。
 私は彼らを止めるどころか、なにもしなかったんだ。
 親友に嫌われるのも怖かったし、なによりそんな勇気は私にはなかったんだ」

クラルスは同じだと思った。
こんな悩みを抱えていたのが自分だけじゃないと知ると、
クラルスは少しだけ心が軽くなった。

「先生たちの期待を裏切ることになったのは苦しかったよ、
 ・・・今では少し、後悔しているところもあるかな」

『私・・・』

「クラルス、君は大丈夫だよ」

『え?』

「君は私なんかよりもしっかりしている。
 真面目で賢く、多くの人から慕われている。
 私が言うのもなんだけど、無理に悪戯をやめさせなくてもいいんだ。
 監督生は君だけじゃない、
 君は君のやり方で監督生として振る舞えばいいんだよ。
 もちろん、度が過ぎた悪戯は止めないだけどね」

『ルーピン先生・・・』


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