Harry Potter ビル
□監督生
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クラルスはこの時、別のことで悩んでいた。
ハリーのことでもルーピン先生のことでもなく、監督生のことだった。
スネイプ先生に言われたある言葉が引っかかっていた。
何日かの前のこと。
魔法薬学の授業が終わり、教室を出ようとしたときに
≪監督生としてご友人の悪行を抑えてくれるだろうと思っていたのだが、
どうやら期待外れだったよだ。心底、残念でありませんな・・・≫
この言葉はクラルスの心に深く突き刺さった。
スネイプ先生のいうご友人とはフレッド・ジョージ・リーのこと。
3人はクラルスがいるところでは悪戯をしなかった。
それは3人がクラルスに対しての思いやりだった。
監督生として減点をさせるような真似はさせないと。
クラルスにとっては有り難かったが、それが逆にクラルスを苦しめる原因にもつながった。
もやもやと悩みを抱えたまま迎えた月曜日、
ハリーが無事に退院し、ルーピン先生も復帰したと聞いた。
放課後、誰もいない空き教室にクラルスはいた。
なにかをするわけでもなく、制服が汚れることも気にせず、
ただ窓の下に膝を抱えて座り込んでいた。
教室近くに生徒や先生の気配はなく、窓にあたる雨の音だけが響いていた。
『(監督生として悪戯を止めさせなくちゃいけないけど、
でも、その悪戯に助けれたことは何度もあるわ。
監督生に選んでくれた先生方の期待には応えたい、
それが原因で3人との仲を壊したくもないし・・・。
今の成績を維持するだけじゃダメなのはわかってたけど、
思った以上に大変な仕事なのよね・・・
スネイプ先生もロックハート先生の時は大目に見てくれたけど、
いつまでもそういうわけにはいかないってことはわかってた。
この調子じゃぁ、3人に合わせる顔がないよ・・・
ハーマイオニーにも減滅されちゃう・・・
こんなこと、ビルには相談できないし・・・)』
自問自答を繰り返す。
考えれば考えるほど、答えは出てこない。
胃や心臓が押しつぶされるような感覚に襲われた。
クラルスは涙が出そうになりぎゅっと目をつぶった。
『(泣いても解決しないのに・・・)』
「こんなところで、なにしてるんだい?」
クラルスは聞こえてきた声にばっと顔をあげた。
復帰したばかりのルーピン先生が目の前に立っていた。
自問自答に没頭していて人が近づく音に気づかなかったらしい。
ルーピン先生もクラルスの顔を見るまで誰かわからなかったようで、とても驚いている。
しかし、驚いた顔から眉をさげ心配そうな顔になった。
「こんなところにいたら、風邪をひいてしまうよ」
『すいません・・・』
「隣、いいかな?」
ルーピン先生はクラルスの返事を聞くことなく、隣に腰を下ろした。