Harry Potter  ビル

□吸魂鬼
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ルーピン先生の言葉が届いていないのか、ディメンターは動かない。
小さな声で呪文を唱える声がした。
ルーピン先生の杖の先から銀色の光が飛び出すと、ディメンターは背を向けて出ていった。
その時、車内は明るさを取り戻し、汽車が動き始めた。

ハマ「ハリー!ハリー!しっかりして」

その場にいたみんなが倒れたハリーを覗き込んだ。
ハリーはすぐに目を開けた、冷や汗をかいている。

ロ「大丈夫かい?」

ハ「あぁ・・・何が起こったの?あいつは?誰が叫んだの?」

『ハリー、落ち着いて・・・』

ロ「誰も叫びやしないよ」

ハリーは明るくなったコンパートメントを見回している。
ジニーはロンに抱きつき、蒼白な顔でハリーを見ている。

ハ「でも、僕、叫び声を聞いたんだ・・・」

パキッっという大きな音がして、みんなが飛び上がった。
クラルスはすぐ隣に立つルーピン先生を見てみると、手には大きな板チョコが。
さっきの音はこの板チョコを割った音のようだ。
ルーピン先生は割った板チョコをみんなに配り始めた。

「さぁ、食べるといい、気分が良くなるからね」

『あ、はい・・・』

クラルスは受け取った板チョコの見つめ、そっと口に含んだ。
その瞬間、体の芯から温まるような感覚がした。

ハ「あれはなんだったのですか?」

ル「ディメンター、アズカバンの吸魂鬼の一人だ」

ルーピン先生をみんなが見つめた。
ルーピン先生は空になったチョコレートの包み紙を
クシャクシャに丸めてポケットに入れた。

ル「食べなさい、元気になる。私は運転手と話してこなければ。
  失礼・・・」

『…私も、他の車両を見てくるわね』

ハ「お姉ちゃん・・・」

クラルスは心配そうに見つめるハーマイオニーの頭を優しくなで、
わざわざ待っていてくれているルーピン先生に歩み寄った。
ルーピン先生はクラルスが隣に来ると歩き始めた。

ル「君は・・・」

『リーマス・ジョン・ルーピン、
 ホグワーツ在学中はグリフィンドールの監督生を務めていましたよね』

ル「…驚いた、もしかして私のファンかな?」

ルーピン先生は驚いたと言っているが、声は楽しそうだった。
クラルスはそう返されると思っていなかったので、少しだけ頬を染めて否定した。

『違います、歴代監督生の名簿に名前が載っていたのを憶えていたんです』

ル「憶えていたって、結構な数だと思うけど・・・」

『記憶力はいい方なんです』

ル「なるほどね…、じゃあ、君の名前を伺ってもいいかな?」

まだ名乗っていなかったとクラルスは後悔した。
一方的に知っていては失礼だったかなとルーピン先生をの顔を
伺い見るが、そんなことはないようで、先生の顔は優しく微笑んでいた。
クラルスはホッとした。

『クラルス・グレンジャーです。
 グリフィンドール寮の五年生で監督生を務めています』

ル「真帆、ね。それじゃ、私の後輩というわけだね」

『はい、よろしくお願いします…お聞きしてもよろしいですか?』

ル「なんだい?」

クラルスとルーピン先生は足を止めずに汽車の中を歩いてく。
最後尾からの移動だとどうしても運転手のところまで時間がかかってしまう。

『…先ほどディメンターに唱えた呪文は《守護霊の呪文》ですよね?』

ル「そうだよ。すごいな、知っていたんだ」

『知識として知っているだけです。
 ・・・試したことはありますけど、成功はしませんでした』

《守護霊の呪文》は一人前の魔法使いですら手こずると言われている。
クラルスは何度か試したことがあるが、独学ではまず無理だとわかっていた。

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