Harry Potter  ビル

□吸魂鬼
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すると、汽車が速度を落とし始めた。

ロ「もうつく頃だ、腹ペコで宴会が待ち遠しい・・・」

ハ「まだ着かないはずよ」

ハーマイオニーの言葉にクラルスは腕時計を確認すると、彼女の言う通り、
まだ着くには早すぎる時間だった。
しかし、汽車はますます速度を落としていった。

クラルスは廊下を見回した。
どのコンパートメントからも生徒たちが顔を出して不思議そうに辺りを見回している。
汽車がガクンと止まった。
そして、なんの前触れもなく、明かりが一斉に消え、急に真っ暗闇になった。

『ルーモス』

クラルスは杖を取り出し、明かりをともした。
手元しか見えないが、ないよりはましだった。

「私、運転手のところに・・・」

『だめよ、ハーマイオニー。ここは最後尾の車両よ、
 他の監督生が運転手のところに行ってくれてるわ。
 むやみに動いたら危険よ』

その時、廊下に半身を出していたクラルスにドシンとぶつかる感覚があった。

「だあれ?」

『その声は、ジニー?』

クラルスは明かりをぶつかってきた方に向けた。
すぐそばにジニーが立っていた。ぶつかったのはジニーのようだ。

「クラルス!よかったわ!」

『ジニー、どうしたの?暗闇で動いたら危ないわ』

「ごねん、ロンを探してたの・・・」

「僕はここにいるよ、入れよ」

クラルスはジニーの背中を押して、中に入れた。
ゴスっ、中でぶつかる音が聞えた。
コンパートメントの中で誰かと誰かがぶつかったらしい。
クラルスの杖の明かりはこの深い暗闇に隅々までは届かない。

「イタッ!」

「ちょっと!」

『大丈夫?気をつけてね・・・』

声からしてロンとジニーのようだ。
クラルスはまた廊下を見ようと身を乗り出したとき、
まるで気温が一気に下がったような、背筋がぞっとするような感覚がした。
体が硬直する、金縛りにあう、とはこのことだった。
それはクラルスだけではなかった。

「静かに」

しわがれ声が聞こえた。・・・ルーピン先生だ。
ルーピン先生の顔は彼が持つ灯りで確認できた、疲れたような灰色の顔だ、
でも、目だけが油断なく、鋭く警戒していた。

クラルスは反射的にドアから一歩下がると、ドアに影ができた。
マントを着た、天井まで届きそうな黒い影だった。
顔はすっぽりと頭巾で覆われている。
マントから突き出すのは水中で腐敗した死骸のような手・・・

『ディメンター・・・?』

クラルスが黒い影の名をぼそっと呟いた。
ディメンター、本で読んだことがある。実物を見たのは初めてだった。
人間の幸福を餌にし、近くにいる人に絶望と憂鬱をもたらす闇の生物。
人間の魂を奪うことができ、奪われた人間は永遠の昏睡状態に陥る、
彼らは人を「抜け殻」にするという。

ディメンターがガラガラと音を立てながらゆっくりと息を吸い込んだ。
ドサッ、横で誰かが倒れた音がした。ハリーだ。
ルーピン先生がハリーを跨ぎ杖を取り出すと、ディメンターに向けた。
クラルスはすぐ後ろでそれをじっと見ていた。

「シリウス・ブラックをマントの下に匿っている者は誰もいない。去れ」

シリウス・ブラック・・・今、世間を騒がせている脱獄犯の名だった。


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