お題・短編

□どうしよう可愛すぎる
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やや無理矢理に彼女とした約束を果たせる日はそう遠くなかった。

彼女はいつもの席に座っていて、僕はまた前に座らせてもらったんだ。
今日は寝ないように気をつけながら、課題を進めるミコトちゃんを見てたんだけど、
止まることなく動いていた羽ペンが止まったんだ。
これも、チャンスに思えて、声を掛けたら教えてほしいってお願いされちゃって。
僕はすぐに立ち上がって、彼女の隣に座ったら、もうびっくりしてた。
びっくりして目を真ん丸くする顔も可愛かったけど、僕は平然を装って課題に目を通した。

上手く教えてあげられてるか心配だったけど、ミコトちゃんはふわっと笑ってくれた。
うん、文句なしに、可愛かった。
そのままミコトちゃんはまた課題に向き合ったんだけど、握った羽ペンはなかなか動かなくて。
覗き込んだら、白い頬はほんのりと赤くなってて。

「(僕が隣にいるから、なんてね)」

そんな自惚れたことを考えながら、ミコトちゃんって呼んだら、君は顔をあげた。
顔をあげてくれたにはいいんだけど、ミコトちゃんは僕をじっと見つめてくるから、
さすがの僕も、その可愛い顔に見つめられたら、照れちゃうんだよね。
そう言うと、君は俯いちゃったんだけど、微かに覗く耳は真っ赤だったのが見えて、
僕の方まで伝染するみたいに顔が熱くなっちゃった。

もう、どうしようもなく・・・
「(愛おしいなぁ・・・)」
今のミコトちゃんを見て、思い浮かぶ言葉はそれしかなかった。

愛おしい、そう思ったら、ちょっと悪戯したいなって思っちゃって。
俯いてる顔を見たくて、また見つめてほしくて、もっと近づきたくて・・・。

「ミコト」

僕の口からでた言葉は、自分で思った以上に甘かったと思う。
ちょっと、恥ずかしかった。
でも、ミコトは顔をあげてくれたし、
真っ赤に染まった顔はすごく可愛かったから、まぁいいかって。

オロオロするミコトはすごく可愛くて、もっと悪戯したくなった。
その小さいピンクの口で、僕の名前を呼んでほしくなった。

『・・・リー、マスせん、ぱい』

小さな声だったけど、呼んでくれた時には、体が痺れるくらいに嬉しかった。
ミコトって勝手に呼んじゃってるけど、イヤじゃなさそうだし。

ミコトは恥ずかしさにまた俯いちゃった。

この時の僕は、自分を褒めてもいいと思う。
僕の名前を呼んでくれた時のミコトの表情は、いろんな意味で僕を狼にしそうだったから。

流れるように落ちる艶のある黒髪はキラキラで、
耳まで真っ赤に染まった顔に、
見上げてくる目はうっすらと潤んでて、
ちょっとだけ開いた口は色っぽくて・・・

ここが図書館じゃなかったら、きっと僕は自分を抑えきれずに、
君を腕の中に抱きしめて、その口に、口づけていただろうから。

それくらい君は、可愛くて、愛おしかったんだ。

どうしよう可愛すぎる



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